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フォルテとアンダンテ
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フォルテとアンダンテ-3


 最初に、左袖からフォルテが歩み寄りました。堂々と胸を張り、その足取りは力強く、立ち振舞いはまさに未来の国王に相応しい貫禄に満ちています。国民はその逞しさに感嘆し、思わず拍手を捧げました。

フォルテは舞台中央に立つと、脇に抱えた羊皮紙の本を開きました。それはフォルテが全力を尽くして書き上げたもので、表紙に紅い子牛の皮が施され、フォルテの自信を際立たせていました。

 そして、フォルテは朗々と良く響く力強い声で語り始めました。

「まず、治水を始めます。この地には東西に川が流れていますが、斜面の上は水不足です。そこで上流に堤を作り水を蓄え、角度を緩やかにした水路を整備し、斜面は平らに整地して畑とし、十分な水を流して耕地を拡大します。これによって穀物の生産量を伸ばします。また一部は新しい穀物生産の実験も行います」

 これには農民が大きなどよめきで答えました。

「次に、我が国の特産である葡萄、カベルネ・ソーヴィニオンはワインにするのに最適の物である事がわかりました。ワインの製造工場を建築し、熟成の室を北の斜面を掘って作り、我が国が世界に誇る商品として出荷します」

 国民はこの思い付きには驚いて、一層の拍手を贈りました。

「そのためには流通をより整備する必要があります。我が国は西側は問題がありませんが、東側の山岳地帯を抜ける道がいささか困難です。それに、東側には帝都もあります。ワインの輸出と雑貨の輸入のための動脈として、これを整備します」

 これには商人たちが大喜びしました。

「また、貿易には拠点が必要です。帝都を中心に大使館を設置し、各国との情報交換と商談のためにこれを有効に運営することが必要です。これらによって、我が国は貿易国として生まれ変わります。また、我が国は景勝地としても優れています。湖沿いに他国の人が安心して静養できる施設を作り、広く我が国を知って貰おうと考えています」

国民はフォルテの賢明さに感心して、声も出ませんでした。

「最後に、我が国は教育が他国に比べて立ち遅れています。学校を作り、他国の教師を招聘して、子供達により優れた教育を与えましょう。また、信仰も厚くし社会を安定させるために法王を選出して、教会を建立し、人に優しく、神に感謝する国家を目指しましょう」

フォルテは赤革の本を閉じると、毅然として言いました。

「以上が、私の考える『この国がこれからどうすれば豊かになれるか、より幸福に暮らすにはどうしたらいいか』の回答です」

国民は一礼し堂々と退出するフォルテを歓声を持って送りました。


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