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フォルテとアンダンテ
【ファンタジー その他小説】

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フォルテとアンダンテ-2


 知らせを聞いた兄のフォルテは、すぐに馬を用意させ、国の東から順番に民に会い、話を聞いて回りました。また、賢者と呼ばれる古老や学者に会い、教えを請いました。もちろん、城の書架にある各国の歴史書を読み返し、あらゆる専門書を夜を徹して読み耽りました。

 また、諸国に使いを出して書簡を送り、諸国の農業事情や交易を調べさせ、自ら遠く帝都まで赴き、商業の動向を調べ集めと、八面六臂の行動を続けました。それはもう、努力の限りを尽くしました。

 弟のアンダンテは相変わらずでしたが、自室に散乱した物語の本を寝転びながら目を通し、羽ペンを取って書簡に何やら書き記すと、使いを出しました。そしていつものように女たちを呼び寄せ、その素晴らしい美貌で甘い言葉を今までになく魅力的に語り、女たちをうっとりさせて床を共にしては眠るのを繰り返しました。それにも飽きると、自室に戻り、大きな羊皮紙に何か大きな絵を書いて、細かくいろいろな事を書き記しています。それが終わると広い華麗に花が咲き誇る庭園に出て、深く青い空を見上げながら、何か考えている様子で寝そべり、やがてまた眠ってしまいました。次の日も同じように、次の日も同じようにして過ごしました。


 さて、その満月の日はこの国の未来を祝うかのように晴れ渡り、月は黄金の円盤のように輝いています。国民のほとんどは仕事を休んで、お城のそばの円形劇場に集まってゆきます。
そこでは城の料理人たちが腕によりをかけてカナッペや軽い食事を作り、誰にでも分け隔てなく与えました。やがて、大きな花火が轟音とともに夜空を虹色に染め上げると、大きなかがり火が円形劇場の舞台を照らします。国民が注目する中、王様が厳かに現れると、地面を揺るがす如く大きな拍手がそれを迎えます。

王様はしばらく手をかざして国民を鎮めると、こう言いました。

「皆に祝福を。今日はわが息子たちが成人するめでたい日じゃ。そして、跡継ぎを決める時でもある。皆心して息子たちの話を聞いてやって欲しい」

 王様はそういうとさらに大きな拍手の中をゆっくりと歩き、脇にしつらえた豪奢な椅子に座りました。

次に、商業大臣が舞台の中央に歩み寄ると、小さな羊皮紙を取り出して読み、咳払いをひとつしました。

「これより、『この国がこれからどうすれば豊かになれるか、より幸福に暮らすにはどうしたらいいか』をフォルテ様、アンダンテ様の順に述べてもらう。どちらが相応しいかは公平に、投票をもって行う。投票所は左手にフォルテ様の投票箱、右手にアンダンテ様の投票箱が用意されている。特に字のかけぬ者のために、同じ重さの石を用意した。投票が終わったら、ここにある秤で比べ、決定する。皆心して務めるように」

 再び万雷の拍手が沸き起こりました。これは公平だ。素晴らしい考えだ。さすがは王様だと、民衆は口々に賞賛の声を惜しみませんでした。


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