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君と僕との狂騒曲
【ショタ 官能小説】

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君と僕との狂騒曲-17


 あの頃、もしも戦争でも始まって、君か僕かどちらかが死ななくちゃならなかったなら、僕は君を守るために、ライフルでも刀でも毒薬でも、迷うことなく死を選んだだろう。君が僕のために一滴でも涙を流してくれたなら、僕には十分満足して逝くことが出来る。僕は君のために生きていた。
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 青く、素晴らしい緑の風の中を制服に包まれて太鼓を叩くのは爽快だった。

それが鼓笛隊というもの。太鼓は揃っていたのに、何故か僕らが一級になるまでやっていなかった。これはその時もその後もわからない謎のひとつだ。

 指導に当たったのは近所で「便利工房」というリフォーム屋をやっている主人で、松沢さんという老人だった。僕たちの団では団長も含めても間違いなく最長老のスカウトで、息子もシニアスカウトに入っていた。

 鼓笛隊とは言うものの、大太鼓、中太鼓、小太鼓しかなかったし、規模もそんなに大きくはない。僕の担当はなんと大太鼓だ。確かに楽器をやっていたし、身長も高い方だったので選ばれたのだろう。僕自身はなんだか単調なことをやり続け、しかも先頭を歩くというのは甚だ不満だった。なんか、スマートじゃない。小太鼓は華麗だし、中太鼓のシンコペーションもテクニカルでいいな、と思っていたから。
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 ところが大太鼓は意外に重要な、どころか、それなしには鼓笛隊が機能しないという楽器だった。なんてったって基本のビートだ。しかも式の松沢さんより、ほんの少し「喰う」ように叩かなければ駄目だ、という事もすぐに解った。打って、胴鳴りがみんなに聞こえるために、そんなタイムラグが生じるのだ。そして中太鼓のトップがバッカーノ、小太鼓のトップが君。大嘘はリズム音痴という重篤な持病があったので、単純にサポート(ただ歩くだけ)となった。

 なぜ鼓笛隊が必要かというと、ボーイスカウトでは各地のボーイスカウト団をいくつか集めて親睦を深めようという理由で、年に四回ぐらい「ラリー」という名で一種のお祭りをやっているからだ。これは例えば「立川ラリー」とか「八王子ラリー」とか、少しばかり大きな街で行われた。

 そういうとき、それぞれの団では鼓笛隊がフラッグシップで、鼓笛隊がない団は、まあ、盛んなボーイスカウト団ではないな、みたいに思われる傾向があったから、「団の存亡を賭ける」程ではないけど、近いものがある。
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 だから学校でも休み時間には君と僕とバッカーノを加えてセッションをした。僕が窓に座って踵で壁を打ち、バッカーノがげんこつで机を叩き、君が手のひらで机を叩くだけで、そこそこ上手なアンサンブルが出来た。

 練習はスカウトハウス、街路、僕らの中学校の校庭が使われた。初めてボーイスカウトの制服で中学校の校舎に入ったら、女子生徒から君と僕にけっこう熱い視線が投げられた。僕らを指さしてピョンピョン飛び上がっていた女子も多かった。「カッコイーッ」と叫んで僕らを目指して駆け寄ろうとした女の子が同級生に羽交い締めされている、なんて信じられない光景もあった。意外だったな。改めて君を見てみると、なるほどかっこいい。多分僕も。女の子が僕らを見る目には特別な「輝き」があった。

 あらためて制服というものに「名誉と尊厳と力」が備わっている事に気がつく。鼓笛隊も制服がなければただのチンドン屋でしかない。僕らは自らの誇りのために制服を着ていたのだ。過酷極まる苦しさや辛い思いをくぐり抜け、色々な技術を身体で覚えた時間が、僕らを強い人間に鍛え上げた証明が、階級章や技能賞と所属する班のエンブレムに刻み込まれていた。もし僕がボーイスカウトにならなかったらどうなっていたかは想像に難くない。日本に居れば大したものである。

 そして立川で行われたラリーで、僕らは堂々と行進した。上手とか下手とかより、胸を張って生きることを僕らは教えられていた。普段はボケッとしてても、制服とネッカチーフを身につけると、僕らは戦士となって戦うのだ。ボーイスカウトの精神とはそういうものだった。残念なことと言えば、僕がちょっと力んで大太鼓の革を破ってしまったこと。まあ、とっくに寿命だったからしょうがなかったんだけど。

 10人以上いた小太鼓のなかで、とびきり正確なリズムを刻む君の音が僕の耳には心地よく響いた。そんな君の音が聞き分けられる自分が嬉しかった。

 僕は昼の顔と夜の顔を自在に使い分ける事にすぐ慣れてしまった。これはどんな事でもそうだけど、僕は「慣れる」のが抜群に上手い。それは今でも変わらない僕の生き残るための処世術ってやつだ。


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