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君と僕との狂騒曲
【ショタ 官能小説】

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君と僕との狂騒曲-14


 「夜を歩く」というのは元気な少年なら一度は夢見た事があるだろう。街は見知らぬものになり、森は風騒ぐマントに包まれる。そして「移動交番」という追っ手もあり、家族に秘密で抜け出してくるから、一種の背徳感もある。そんな危険を冒すのはそれだけでもドキドキするのに、それにも増して夜の世界は魅力的だ。少年の血は熱い。
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 ところがボーイスカウトには「オーバー・ナイト・ハイク」というものがある。これは一晩で50kmを歩く訓練だ。それは気兼ねせずに堂々と夜を徹して歩く事が出来るという意味だ。何て言う自由と解放。

 僕らスワロー班で経験したのはこの街から五日市を往復するもの。記録があるので、とにかく大急ぎのハイキングである。恩田陸の「夜のピクニック」に似てはいるが、もっとプロフェッショナルなものと考えてくれて良いと思う。行程は五万分の一の国土地理院発行の地図と照らし合わせながら進むのだが、僕らが歩くときに大きな目安になる「高圧線」が見えない。コンビニなんてものがなかったから「目安」になるポイントがほとんどないのだ。

 わずか50kmかと思う人も多いと思う。しかしこの街から五日市の往復を五日市街道を使ってはならない、と言われたらどうだろう。オーバー・ナイト・ハイクは四つの班の道がひとつでも同じだったら申告しても許されない。だから50kmと言っても、実際は80kmぐらいにまで伸びてしまう。上記したような理由で必ず道に迷うから、もっと過酷と言ってもいい。

 君と僕を含むスワロー班は、班長の指示に従って歩き通した。「必ずキャラバン着用の事」というのがわからなかったが、実際に歩いて、テニスシューズやスニーカーを履いてきた連中は泣きを見た。今みたいにハイテク・シューズがあればどうなっていたのかはわからないけど、キャラバンは確かにスニーカーよりも有利だった。

 真夜中の「小休止」は最高に気持ちよかった。あのひんやりとした静寂と安心感は表現が難しいけど、一度あなたも夜の道を、水銀灯の光の下で寝ころんで見ればいい。きっと僕の言った意味が分かるから。
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 僕らは五日市近くで面白い経験をした。アメ車が僕らの前に止まり、中から屈強そうなヤクザが出てきて僕らを取り巻いた。

ヤクザというものに会ったのは初めてだったけど、当時のヤクザは本当にヤクザらしいスタイルをしていたので驚いた。派手なシャツの襟をダブルのスーツの外に出し、首にはお約束の金のチェーン。そして多分ロレックス。

 「てめえら、どこのもんじゃい!」ときた。

 僕らの班長は、まずボーイスカウトとは何かを説明しなくてはならないし、警察の許可を取っていることも説明しなくてはならない。あまり上手くない説明の後、ヤクザは車に乗るときに「てめえら、ちょろちょろするんじゃねえぞっ」とかまして帰っていった。君は腕を組んでちょっと首を傾けていた。状況判断をするときの君のくせだった。君は誰よりポーカーフェイスだったが、僕はもう君のいろいろなサインを読むことが出来たのだ。 これだけ毎日会い、行動を共にしていると、いいかげん相手の考えが読めるようになる。
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 僕らは「スカウト・ペース」というものを使った。50歩走り、50歩歩く。これをどんどん繰り返す。結果、僕らスワロー班は九時間と少しで帰還して、タイムレコードを書き換えた。

 君は「一回決めたことをちゃんと実行する」事がなにより好きだったから、(というより法律や哲学、へたすると宗教の戒律に近い)過酷なハイキングの後でも爽やかだった。君の笑顔を見ることは難しいけど、このオーバー・ナイト・ハイクで君は満足しているゆったりとした微笑みを浮かべた。

 君も僕も血豆をひとつふたつ作ったけれど、スニーカーでやった連中は悲惨だった。

 僕はオーバー・ナイト・ハイクの全行程、ほとんど君の背中しか見ていなかった。たまに並んで話したが、なにしろ目標は記録だったため、それどころじゃない。でも、「一晩中一緒にいた」って事に加えて、君の笑顔が見れたことで、充足感を感じていた。人を幸せにする仕事ってなんだろう?あるのならやってみたい。


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