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貧困娼年の奈落
【ショタ 官能小説】

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貧困娼年の奈落-1


なんだろう?なんでこんなになっちゃったんだろう。



飢えはいつでも身体を苛むのに、水便が止まらない。そして口の中に注ぎ込まれる「食事」。
もう汚物の匂いが解らない。「臭い」って何だったんだろう。
段ボール箱に印刷された商品名やしわくちゃの新聞紙の見出しとか、ただ読んでいるだけ。
汗も唾液も淫水も汚れた陰茎の白濁したものも舌に絡みつき、澱んだ瞳は疲れ切っている。
そこには性に飢えた盛りの若者、卑猥な表情を浮かべて滑るような脂汗を浮かべた中年、時にはとっくに枯れた老人までもがやってくる。ただただ、排泄するために。
時折与えられるのはパンの耳や腐敗した正体のわからないもの。それを翠は狂ったように貪り、喉に流し込む。

その白眼がちな瞳は焦点を失って彷徨い、可憐な唇はだらしなく半開きのまま。
髪や身体に飛び散った粘液は乾き、不気味な紋章となって翠の幼い身体を飾る。
もはや自分が何処にいるのか、自分が誰だったのか、翠には思い出すことが出来ない。

ただ、浮浪者や流れ者、ホームレスの肉便器として。



騒々しい機械音と瓦礫の崩れる光景の前で、言葉を失った。

母さんと僕の「家」はパワーシャベルと測量士や「現場の人間」で埋め尽くされ、道はガードマンが通行止めにしている。
ビニールシートは跡形もなく撤去され、母さんの服も、僕の着替えも、ボストンバッグも何もかもが消滅していた。
そして翠が石の下に隠していた現金も。

母さんと僕の「家」がなくなっている。
翠がほんの三日間帰らなかった間に、それはすでに「開発」という破壊の現場となっていた。

携帯電話?とんでもない。電話番号?そんな物はない。住所?あり得ない。
母さんの入り浸っていた街も店も、何一つわからない。

翠は何時間そこに立ち尽くしていたか憶えていない。

そして街を彷徨っては、何度も何度も何度も、工事現場と化した公園に戻るけど、そこに救いはない。
人は眠らなければ生きて行けない。例えどんな場所だろうとも。
翠は唯一の友人であり教師である「グーグル先生」に会えるだけのお金を持っていなかった。

最初は「お城の公園」で野宿しようと試みたが、世間はそんなに甘くない。

その睡眠を妨げたのは犬の吠え声だった。
警察は人間の百倍も嗅覚が敏感な犬を使って、不法な滞在者を追い出そうとしていた。

暗闇の中を延々とさまよい歩く。避難所を。シェルターを求めて。

翠が辿り着いたのは、公園という場所を占拠したスラムだった。
芝生よりも雑草の方が多い、もう何ヶ月も清掃されていないだろう公衆便所。
どう考えてもまともではない人々の住居と思われるトタンやテントの群。

翠は出来るだけ目立たない場所を探し、可燃ゴミを束にした所から持ってきた段ボールを重ね、なんとか眠りについた。

「お友達をあてにしないで、自分の事は自分でしましょう」

学校で習った事でも、飢えは耐えがたい。なんで現金を常に持っていなかったのか。後悔してもいまさらどうにもならない。
それだって「大切な物はちゃんと保管しておきましょう」という教師の教えによるものだ。
翠は小学校の担任のオールドミスを心から憎んだ。


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