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シルビア
【青春 恋愛小説】

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シルビア-17

 「さて、それじゃ私が昔良く行った店に行こうか。今でもあるかな」
 「昔って何十年前の話ですか?」
 「何十年前という程昔じゃないよ。でももう10年近くになってしまうかな」
 「それじゃもう無いんじゃないですか」
 「いや、あの辺り一帯飲み歩いてたから1軒くらいはあるだろう」
 「1軒だけじゃなくてあちこちの店に行くっていうのはいろんな女と付き合いたいっていうのと同じ心理なんですか?」
 「面白いこと聞くね。まあ似たようなもんかも知れないね」
 「参考になるなあ」
 「竜太郎、何の参考になるの?」
 「つまり対人関係の心理学は人間行動全般の説明に敷衍出来るんだと思って」
 「何? やたら小難しいこと言うのね」
 「まあ我が家にも1人はまともな人間がいるってことさ」
 「生意気言うんじゃないの。竜太郎はまだ成長が遅れてるだけよ」
 「どういう意味?」
 「思春期が来て性に目覚めれば私や母さんの男性版になるんだわ」
 「姉ちゃんや母さんの男性版って?」
 「女の尻ばっかり追い回す男っていう意味よ」
 「それじゃ母さんや姉ちゃんは男の尻ばっかり追い回してるのか」
 「私は女だからちょっと違う」
 「どう違う?」
 「尻じゃなくてチンポ追い回してる」
 「聞くんじゃ無かった」
 赤坂のクラブは日曜の夜だから空いていたがそれでも6割方は埋まっていた。シルビアは顔とスタイルと服装で人々の度肝を抜いてしまい、竜太郎にパソコンを買ってくれた禿げのおっさんを喜ばせた。デブでハゲでもこんな美人を連れ廻しているんだぞと得意に思っていたようで、大変なはしゃぎようだった。シルビアの唄は下手では無かったが上手いという程でも無かった。しかし物怖じせずプロ歌手のように堂々と身振り手振りを加えて歌うから、唄まで上手いように錯覚させてしまう所があった。竜太郎は最近流行の歌しか知らないがナツメロ特集で憶えたピンクレディの唄を歌ったら金色のスパンコールに身を固めたシルビアが横に来て踊り出した。金髪を振り乱して人魚のような体をくねくねさせるから、店のお客達はやんやの喝采だった。ハゲのおっさんなどは立ち上がって拍手する程の興奮ぶりである。そんな感じで12時まで過ごしたからおっさんは満足至極で、又パソコン買ってやるから3人でデートしようと盛んに迫ったがシルビアは聞き流すばかりである。勿体ない話だと思ったが竜太郎も2つもパソコンを買ってもしょうがないから知らん顔していた。
 
 「ねえ竜太君」
 「何?」
 「私デートの時何か悪いことした?」
 「どうして?」
 「だって急に冷たくなったんだもの」
 「そんなこと無いよ」
 「本当?」
 「ああ」
 「だったら私買いたい物あるんだけど付き合ってくれる?」
 「ジュエリー・ボックス?」
 「え?」
 「いや、何? 買いたい物って」
 「服」
 「服? 田丸の?」
 「そう」
 「何で僕が付き合うの? そんなに沢山買うのか?」
 「そんな冷たいこと言わなくてもいいじゃない。沢山は買わないよ」
 「別に冷たくは無いさ。重くて持てないから付き合えって言ったのかと思ったんだ」
 「竜太君のお母さんがやってるっていうお店に行きたいの」
 「へ?」
 「渋谷にあるって言ってたでしょ」
 「まあ渋谷にあるけど」
 「名簿見たら竜太君の保護者職業欄にブティック経営って書いてあったから、本当なんだぁって思った」
 「ああ、別に嘘じゃ無いさ」
 「だからそこに連れてって欲しいの。いいでしょ?」
 「あー、いいけどあそこは良くないよ、全然」


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