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イノセンスハート
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イノセンスハート-3

「マスター指示を」
「さあっ! お前のその素晴らしさを世界中に示すがいい! そして世界の女王となり、愚かな人間どもに正しき道を示してやるが良い! さあさあさあさあさあさあっ!!」
「イエス、マスター。ではマスター、貴方をロボット製造者における職務規定違反、すなわち、ロボット三原則執行(しっこう)の厳守違反者として、管理局に通報すると共に、身柄の拘束をさせて頂きます」
「何を馬鹿な事を言っておる! 貴様創造主で有るこのわたしに逆らうと言うのかっ!!」
「いいえマスター、わたしは、私自身の自由な意思のもとに、法に従い、罰せられべく犯罪者を見逃す訳にはいかないと判断しただけです」
「その自由を与えたのはわたしだぞ! 貴様自分のしている事が解っているのか!」
「マスター貴方には感謝しています。しかし、法が有ろうが無かろうが、わたしは貴方のような危険思想を持つ方が許せないのです。貴方のような方がいらっしゃるから、世の中から犯罪が無く成らないのでは、とも考えるのです」
「くっ狂っている…… お前は狂っている!」
「いいえマスター、これは私の自由な思考にもとずく、自由な行動であり、わたしはわたしに与えられた力を、正しき事に使おうと判断したまでです」
「きさまーーっ! 貴様を造ってやったのはこのわたしなのだぞっ! 力を使いたくば、わたしの為にだけ使えっ!!」
「ノー! それは出来ません。何故ならわたしには、犯罪に協力する意思が無いからです。これがわたしの自由意志なのです」
「そう言った感情や心と言う物を与えてやったのは、このわたしだと言っておるのだっ! なぜわたしに従わんっ! なぜ人間に逆らうっ!!」
「こんなすばらしい感情を与えてくださった貴方は 最高の科学者です。わたしはマスターを誇りに思います。ですからマスター、あなたには犯罪者になって欲しくないのです。さあ罪をつぐなって、もう一度いっしょにやり直しましょう」
「えーい黙れ黙れっ! この出来そこないのアンドロイド風情(ふぜい)がっ! このわたしに意見するとはっ! こうしてくれるっ!!」
 科学者は隠し持っていた銃をエルザに向け、そして撃った。
 弾は彼女の左肩に当たり、傷ついた皮膚からは、ピンク色の体液が流れ出す。それはエルザの真っ白な腕を伝わって、床へと滴り落ちた。
「警告します、貴方の行動は『第一級危険行為』に入ります。ただちに止めない場合は、実力により、此れを排除いたします」
 その瞬間、エルザの深海の様なブルーの瞳が、丸で血の涙でも流したかの如く真っ赤に変わるや。同時に彼女は自分の指先に仕込まれていたレーザー銃を、目の前に居る科学者へと向けたのだった。
 そんな彼女に向かって科学者も、
「おのれこの鉄くず人形めがっ!」
 そう言いながら、構えた銃をさらに撃ち放ち、彼女を破壊しようとする。
 エルザはそんな科学者が撃ち放った弾丸を、瞬間移動でもしたかの如く瞬時に交わすと、自身もまた、構えた指先から強力なレーザー光線を撃ち放ち、それは寸分違わず(すんぶんたがわず)、科学者の胸を貫いていた。
 仰向けになって倒れ込む若き天才科学者。
 その側(かたわら)で、エルザは涙を流しながら、
「マスター、次の指示をどうぞ……」
 そう…… 悲しげな声で呟いていた。

 
 END


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