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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-25

 「良介君、田宮さんと3人でいいから、夜うちにおいで」
 「僕は小山っていうんだ」
 「それじゃ小山君、夜うちに来て」
 「大和田と田宮に聞かないと分からない」
 「それじゃ聞いてみて」
 「順子には芳恵から話した方がいいよ」
 「そうか。そうだね」
 「順子にはこっちで話すから小山君言わなくていいよ」
 「大和田には?」
 「もう言ってある」
 「もう言ってある?」
 「うん」
 「何て言ってた?」
 「その時の状況で行けたら行く。ひょっとしたら私1人で行くことになるかも知れないって」
 「僕、聞いて無いな」
 「今聞いたでしょ」
 「何で言わなかったんだろ」
 「裕子は人間関係の綾を考えて苦労してんだよ」
 「人間関係の綾?」
 「小山君には分からないの」

 文化祭の後はフォークダンス、ファイアー・ストームと暗くなるまで行事が続く。しかし友達と約束がある生徒は三々五々それぞれのグループごとに散っていく。良介達もフォークダンスには参加しないで学校を出た。カラオケ・ボックスには他のクラスの生徒も来ていた。大体高校生の行くような所は決まっているのだろう。田宮順子はコーラス部に入っているくらいだから歌が上手いのは当然だが、大和田裕子もなかなか上手かった。良介はゆっくりした曲だとまあまあだが、ちょっと早い曲になると上手く歌えなかった。しかし誰もヤジを飛ばしたり冷やかしたりする者がいないので楽しく過ごした。歌いながら沢山の写真を撮りまくった。

 「大和田さん、人間関係の綾って何?」
 「人間関係の綾?」
 「人間関係が入り組んでること」
 「小山君誰からその言葉聞いたの?」
 「室野と木原」
 「人間関係の綾が何だって言ってたの?」
 「大和田さんがそれで苦労しているって」
 「私が苦労してる? 何のことだろう?」
 「裕子、ひょっとして私のことなんじゃない?」
 「田宮さんの話も出たの? その時」
 「うん」
 「何て?」
 「カラオケのあと3人で室野のうちに来いって」
 「ああ、そのことか」
 「何で黙ってたの?」
 「黙ってた訳じゃないけどカラオケの後3人で何処かへ行くことになるかも知れないし、行く所が決まらなければその時に話しようと思ってたの」
 「そうか」
 「裕子は私にどう話を切り出そうか苦労していたという意味よ」
 「何で?」
 「私と芳恵が余り仲が良くないから」
 「僕も良くない」
 「だから小山君にも言わなかったの」
 「そうか」
 「喉が乾いたし、何か持っていった方がいいからコンビニ寄って行こう」
 「そうね」
 「コンビニ寄って何処行くの?」
 「だから室野さんのうち」
 「え? 田宮行くの?」
 「うん、鹿鳴館のメンバー全員が集まると言うし、芳恵に直接頼まれたんじゃね」
 「仲が悪いんじゃ無かったの?」
 「小山君に分かりやすく仲が悪いと言っただけで仲が悪いのとはちょっと違うの」
 「どう違う?」
 「お互い敬遠していたっていうかな、そんな感じ」
 「どんな感じ?」
 「小山君、私が西高の文化祭に行こうって誘った時『行きたくない』って断ったでしょう?」
 「都合が悪いって言ったんだ」
 「だから本当は都合なんて無かったのに行きたく無かっただけでしょ?」
 「まあそうだ」
 「小山君あの頃私のこと嫌いだった?」
 「別に嫌いじゃない」
 「そうでしょ。それなのに私と一緒に行きたくなかったんでしょ?」
 「うん」
 「それと同じよ」
 「そうか」
 「小山君、田宮さんとだいぶうち解けてきたね」
 「うん、下着まで見せた仲だからね」
 「下着を見せた?」
 「気付いたら見えていたんだ」
 「小山君のお姉さんが来た時裕子が小山君探していたでしょ? 私プールで泳いでいる小山君見つけたからプール・サイドにしゃがんで中にいる小山君と話ししていたの」
 「ああ、それで見えたのね」
 「みんなに言ったら駄目よ」
 「言わない」
 「私達の秘密だからね」
 「うん」
 
 芳恵の家は杉並区にあり、鬱蒼とした森に囲まれた大きな家だった。良介は粕谷マサルの家が大きいのでそれより大きい家の子はいないだろうと思っていたが、芳恵の家には驚いた。


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