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危険な自慰
【その他 官能小説】

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湖を見下ろす公園のベンチ-1

 美術館を出た私は再びロードスターで峠道を登っていった。この辺りはバスがたくさん走っているので、さすがに女体オープン走行はやめておいた。
 登るにつれて道路は徐々に狭くなっていき、センターラインが消え、ついには舗装されていない土の地面へと変わった。しかもカーブがきつくなり、すれ違いはかなり難しい。
 これ以上車で進むのは無理ではないのか、と思い始めた頃、いきなり広大な広場に出た。それは大きな湖をグルリと囲む自然公園の駐車場で、私はなんとか目的地に到着することが出来たというわけだ。
 しっかりと舗装された駐車場のアスファルトは、靴底が溶けそうなくらいの熱で盛大に陽炎を立ち登らせている。
 真夏の直射日光は手加減などしない。高地は気温が低いので誤解しがちだが、本当は高いところほど強烈な日光を浴びることになる。
 それじゃあなぜ高地は涼しいのか。
 太陽光は空気を暖めない。通り過ぎてしまうから。地面を暖め、その熱が大気に伝わって気温を上げる。だから、高度を増す、つまり平地から離れていくに従って気温はどんどん低くなっていく…んだけど、今、そんなことはどうでもいいや。
 昨日の遊園地みたいに熱気ムハムハーではないとはいえ、日差しはむしろ強い。露出している肌や髪がチリチリ痛くて、あれこれ余分なことを考えている場合ではない。ついさっきまでの快適な林間ドライブが、もう懐かしい。
 私は急ぎ足で駐車場を横切り、森の中の散策路に避難した。
 自然の力で絶妙な間隔に配置された原生の木々は、何百年、何千年、いやもしかすると何万年もの歳月をかけて積み上げられた腐葉土に根を張り、揺らぐことなく屹立している。
 その足元には敷き詰められたように落ち葉が隙間なく重なり合い、歩くたびにカサカサと小さな音をたてた。
 一応の散策路は整備してあるものの、ほとんど自然のままの森林がそこにはあった。
 しばらく歩いたところで散策路から外れ、緩やかな傾斜を下って湖の方に降りてみた。そこには二人掛けぐらいの茶色い小さな木のベンチが湖の方に向けて置いてあった。
 横から見ればL字型のそのベンチは、背もたれが私の腰ぐらいの高さしかない。そして幅10センチ弱ぐらいの細長い板を左右に三枚渡してあるだけの簡易な作りなので、その数ミリの隙間から向こう側の湖が微かに見えている。
 ベンチに座り、背もたれに軽く身を預けた。ギ、と木の軋む音が振動とともに背中に伝わってきた。
 目の前には静かな湖面が広がっている。対岸はあまりにも遠く、もし人が居てもどんな姿で何をしているのか、ほぼ分からないだろう。
 前方は大きな湖。周囲は木立。
 「…。」
 湖と森を通り抜けてきた爽やかな風が心地よい。
 「…。」
 木々の葉っぱがサラサラと音をたてながら揺れ、直射日光を防いでくれている。
 「…。」
 スカンツのホックを外した。
 キィ、キキィー。
 遠くで鳥が鳴いている。
 ファスナーのタグを摘まんだ時、さっき美術館で会った西洋人の女性の事を思い出した。
 絵の中から出てきたような、などという使い古された表現なんかでは語りたくない、神秘的なのに艶かしい空気を纏った不思議な魅力を放つ人物だった。
 あの時私は、自分自身が抗う声を聞きながらスカンツのファスナーを開いた。こんなふうに。
 チー。
 スカンツを足首まで下ろした。そのまま抜き取ろうとしたが、ハイカットのドライヴィング・シューズが邪魔でうまくいかなかった。
 「またか。」
 私は苦笑いをしながら靴を脱いだ。そして、ようやく足首から抜き取ったスカンツを畳んでベンチに置いた。
 パンティに手を掛けた。でも、手が動かない。
 ここは完全な野外。
 湖や木立があるとはいえ、私を囲む壁はなく、簡易なベンチの頼りない背もたれだけが私に与えらえれた全てだ。それすらも腰から下の小さな面積を背中側のみ隠しているに過ぎず、もしも横に回り込まれたら、完全に無防備な状態で私の行為を晒してしまうことになる。
 もしここで脱いでしまったら…。
 パンティを掴んでいる手が微かに震えている。
 私は躊躇している。
 しかし、恥じらい躊躇する自分になおさら激しく欲情を煽られてもいる。
 その証拠に、私の息はどんどん荒くなっていく。
 「どうしてこんな女になっちゃったんだろう。」
 満員電車で前に立っていた女の人のポーチがたまたま私の敏感な部分に強く擦り付けられた。たったそれだけなのに。あんなに人が密集している電車内で、私は一瞬で絶頂を迎え身を震わせた。
 ありえない状況で味わってしまった悦楽。それが私を甘美な狂気の欲情へと誘い、ついには野外でこんなことをさせようとしている…。
 パンティを掴んだ手に力を込めた。ゾクゾクとした皮膚感覚が太腿から下腹部へと広がっていった。
 …ああ、脱ぐんだ私は。こんな所で脱いでここを晒してしまうんだ。
 震える手がジワジワと下りていく。陰毛が少しずつ顔を出していく。
 手の下降は止まらない。このままではそこを隠すものが無くなってしまうというのに。
 手の下降が止まらない。あとほんの数ミリで敏感な蕾が顔を出してしまうというのに。
 手が止まった。


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