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BаBY
【初恋 恋愛小説】

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BаBY-2

「アンタみたいなガリ勉、タイプじゃないわ」
「そうか?俺は好きだけどな、ベイビーのこと」
「なっ!!何よ、ベイビーって…!」
…私はすぐに顔を背ける。いつも言われているけど、これだけはどうしても慣れない。ついドキッとして顔が赤くなってしまう。
「お?照れてんのか?冗談に決まってんだろ!!本気にすんなよな」
私の赤い顔を見て大声で笑うナオ。これがいつものパターンで、シメはもちろん

―ドカッ!

私の蹴り。
「…痛ぇ…なんか本格的だな…」
「当たり前でしょう?最近、健康のためにキックボクシングを始めたの!次はナオの顎を私の拳が砕くかもしれないわ」
「…まじかよ」
太ももを押さえて呻くナオを尻目に私はさっさと教室に戻る。
「授業が始まるわ。それじゃあ、さようなら!」


今日も有意義な一日だったと振り返りながら、私は川原を歩く。洋楽を聞きながら、大きく手を振り、リズミカルに歩いている。ヘッドホンからは洋楽が流れていて、思わず口ずさむ。ウォーキングしながら英語の発音の勉強。どう?一石二鳥でしょ?
ノリノリで歩いていると誰かが私の肩を叩いた。
「…誰!?」
振り向くとナオが口をパクパクさせていた。このままじゃ全く声が聞こえないので、私はMDを止めてヘッドホンを耳から外した。
「めちゃめちゃ呼んだのに…」
「聞こえるわけないでしょ?曲聞いてたんだから」
「誰の?」
「セリーヌ・ディオン」
「ふーん…洋楽か」
ナオはそう言って頭を掻いた。
「それより、何でこんな時間ココにいんのよ」
私は止めていた足を動かした。私に合わせてナオも歩く。
「バイト帰りだよ」
「バイト?してたっけ」
「最近、お小遣い稼ぎのために居酒屋でバイトを始めたの」
ナオは今日の私の口調を真似た。あまりにも似てないうえに、鼻に掛かったような声が妙に頭に来たので、腰辺りにプロ直伝のキックをかました。
「いってぇ!!」
「何でバイトなんかしてるの?別にお金に困ってないでしょう?」
ナオは「うん…」と少し気まずそうに話し始めた。
「俺んち…父親いねえだろ?その代わり母親がバリバリ働いて、俺のこと養ってくれてた訳よ。服とか靴とか全部買ってくれて…でもそれは、自分の生活切り崩して俺に回してくれた金だってやっと気付いた」
後ろからの月明かりで私たちの影が並んで長く伸びている。
「だからさぁ…何つーか、高校生にもなったことだし、自分の金は自分で稼ごうかなぁと思って。昨日、何年かぶりに服買ったんだって喜んでたよ…」
ナオの顔を見ると、嬉しそうに目を細めて空を見上げていた。
「格好いいじゃない」
私が誉めることなんて珍しいようで、ナオは「えっ」と言って立ち止まった。
「ナオ、格好いいじゃない。偉いわ、とっても…。私、すごく見直した。ナオ、頑張ってね!」
正直、初めてナオが格好いいと思えた。星空が見上げるナオの澄んだ瞳に写っていて綺麗だった。
ナオは何も言わなくなった。その場に立ちすくんで動かない。
私は変な奴だと思いながら、数メートル先にある自動販売機まで歩いていった。この自動販売機で私は毎日お茶を買う。ただでさえ電灯が少ない道。自動販売機の前だけが明るかった。


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