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《夏休みは始まった》
【鬼畜 官能小説】

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〈屠られる幼畜〉-4



――――――――――――


里奈が居なくなった部屋は、とても静かになっていた。
互いの呼吸の音が聞こえる……コクンと唾を飲み込む音さえも……それは居心地が悪いくらいの静寂であった……。



「……ねえ真夏…ここの窓から露天風呂って見えるのかな…?」


最初に静寂を破ったのは奈々未のほうだった。
念願の二人きりなはずなのに、今が〈答え〉を聞く最高のチャンスなのに……しかし真夏は切り出せない。

その痛いほどの緊張感は奈々未にも伝わっており、なんともチクチクする気持ちを誤魔化すように立ち上がると、すっ…と窓辺に行き、竹垣や植木で隠されてて見えるはずのない露天風呂を覗き見る。


(い…言わなくちゃ…ッ…今…今が聞くタイミングじゃないの…!)


意を決して顔を上げた真夏は唇を真一文字に結び、とても緊張した面持ちだった。

友達としての関係までも無くしてしまうかもしれないという覚悟を持って告白したはずなのに、いざ其れが目の前に迫るととたんに勇気が萎み、口から言葉が出てこない……。


「……どうしたの?」


窓辺に立つ奈々未の瞳は、真っ直ぐに真夏を見つめている。
告白の後でも普通に話せていた二人なのに、今の真夏は顔を赤くさせてガチガチに固くなってしまっている。


「……あ、あのッ!あ…あの……私ね……ッ」


今日で決まる……呼吸は詰まり、声は上擦り……それでも真夏は奈々未をしっかりと見つめ、自分の想っている事、感じた事の全てを打ち明け始めた……。


「あの…実は私ね、小さい頃に男の子に苛められて……それがとっても怖かったの……」

「……うん……」


真夏は自分の幼少の頃の話から奈々未に話した。

幼い男子が好意の裏返しとして好きな女子を苛めるのはよくある話だが、その中の一人に髪を引っ張られたのがトラウマになり、それから“男嫌い”が始まったと打ち明けられた。
そして中学生に入った時、その男嫌いを決定的にさせる事件が発生した。

それは大学生が顔馴染みの女性を泥酔させ、集団でレイプしたというニュースだった。

思春期真っ盛りの真夏にとって、その事件はあまりにもショッキングに過ぎ、やっぱり〈男〉は乱暴で怖いものだという認識を固めるまでに至った。


「だから……恋愛対象に男子は有り得ないの……で、でも女子が好きってワケじゃなくて……ははッ……何の話してんだろ…私……」

「…………」


真夏は自分自身のこれまでを赤裸々に話した。
それは自分の気持ちだけを奈々未に押しつけようとしていたのを恥じ、それじゃ駄目だと思い至ったからだった。
そんな“何もかも”を曝け出した真夏の勇気を、奈々未は否定出来なかった……。




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