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天界の翼 二千年に一度のハロウィン
【女性向け 官能小説】

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白と黒-1

 「なんということだ…。コウガを選んだというのか、エリス。」
 「そうよ。そして思い出したわ、自分が何者なのかを。私は妖魔界で生まれたけど妖魔の女じゃない。人間界で育ったけど人間じゃない。私は…天界の翼エリス。」
 「そうさ、そうだよエリス。翼魔界の王になるためには天界の翼と交わらなければならない。もう少しでコウガを殺し、オマエと…。そうすれば僕が王になれたのに。なぜだ!なぜ急に記憶が。」
 「記憶なんか関係ない!コウガを守りたい…私はそう願っただけよ。」
 「僕ではダメなのか?」
 「ダメ。」
 「実も蓋もないな。」
 「無理やりあんなことさせるような人、選ぶわけがない。」
 「…。」 
 「翼を収めろ、ユウジン。分かってるだろ、完全体たる双翼に単翼は勝てない。殺しはしない、何処へなりと去れ。」
 「…。」
 紅蓮と純白。左右の翼をはためかせ、私たちはユウジンに迫った。
 「ふは、はは、ふはははははは!」
 「狂ったか。」
 「仕方ない。オマエで我慢してやるよ。来い、ラクス。」
 「ふん、我慢されてやるよ、ユウジン。」
 いつの間にか近くに来ていたラクスが漆黒の翼を広げ、ユウジンにしがみついた。
 「よせ、おまえたちは二人とも…」
 「ああ、そうとも。男だよ。何が悪い。なあ、ユウジン。」
 「だな、ラクス。」
 ブワゥウゥン。
 ユウジンとラクスは光に包まれた。そしてユウジンはラクスを後ろから抱え、中に…。
 「やめろ!禁を犯せばどうなるか分からないんだぞ?ユウジン。」
 「もうどうでもいいさ。付き合ってくれるだろ?ラクス。」
 「しょうがないなあ。」
 「バカな…。」
 バサァ。
 紺碧の翼と漆黒の翼を背負った彼らの唇の端は、Vの字に見えるほどに吊り上がっている。
 これって、
 「悪魔…。」
 「そうだ。王位継承争いに敗れたものは悪魔となる。」
 「僕たちは悪魔、か。」
 ユウジンとラクスがアメリカ人の様に両手を挙げるポーズをした。
 「エリス。」
 「何?コウガ。」
 「今日は何の日だ。」
 「え?私の誕生日…」
 「いや、そっちじゃなくて。」
 「ハロウィン?」
 「そう。元々は農民の収穫祭の儀式に過ぎなかった。でもそれを、仮装してふざけまわるお祭り騒ぎにすり替えた。翼を現した翼魔と天界の翼が目立たないようにカモフラージュするためだ。それがハロウィンの真実。だが、ハロウィンにはもう一つの隠された意味がある。」
 コウガと私は攻撃の態勢をとった。ユウジンとラクスがそれに応えるように身構えた。
 「人知れず悪魔を払う。それがオレたち翼魔のハロウィン。去れ、悪魔。ユウジン!」
 「おいおい、コウガ。何のために僕たちが双翼になったと思ってるんだい?」
 「翼を収める気は無いということか。」
 紅蓮と純白。紺碧と漆黒。
 どちらも動かない。動かない。動かない。


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