投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

浪漫飛行
【その他 その他小説】

浪漫飛行の最初へ 浪漫飛行 1 浪漫飛行 3 浪漫飛行の最後へ

流星群-1

いつから其処に居たのかはわからない。
「私」が一番最初に見たモノは、白衣を着た人々だった。
そして、体中に張り巡らされたチューブの感触。
拘束されていた訳ではないのに、「私」は白衣を着た人々を見上げるだけだった。
その頃はまだ逃げる余地があったのに、だ。
けれど、その理由が今ならわかる。
その頃の「私」は、「逃げる」という行動を知らなかったからだ。
「逃げる」という行動だけではない。人間の言語もその時はまだ、知らなかった。
その後「私」は、あの温室の中で人間に関するあらゆる知識を教え込まれていった。
あらゆる、といっても、ヒトを殺すのに必要な知識のみだけれど。
苦しめて殺害する方法も、楽に殺害する方法も、その時に教わった。
でも、その頃の「私」に殺害の方法の違いなんて理解出来る訳がない。
想定していた以上の血液が出血したり、切断してはいけない部分を切断するのなんて、日常茶飯事だった。
その度に、研究者達は「私」にどこをどのように間違えたのかを懇切丁寧に教えていたらしいのだが、記憶にない。
あの頃の「私」は、ヒトを殺すのに夢中だった。
ヒトが死ぬ間際に見せる表情が印象深くて、何故そのような表情をするのか知りたくて。
「だから、たくさん、殺した」
疑問が不安に、不安が恐怖に変わるのに、さほど時間はかからなかった。
そうして「私」は、殺人兵器としての寿命を迎える事になる。
「あの温室へ放り込まれてからも暫くの間は、得体の知れない恐怖に怯える日々が続いたの。あの温室の周囲は、意図的に無人にされていたから」
ヒトという生き物がわからなかった。
でもそれ以上に、「私」という存在が理解できなかった。
ヒトは老いて死にゆくのに、「私」は老いる事もない。
「私」の最後は一体どうなるのだろう。
何になるのだろう。
どんな化け物に、成り果ててしまうのだろう。
来る日も来る日も考え続けた。
けれど、もう昔のように教えてくれるヒトはいない。
「彼らにその事を質問して、きちんとした解答が得られるかどうかはわからなかったけどね」
そう言って、私は彼を見上げた。


浪漫飛行の最初へ 浪漫飛行 1 浪漫飛行 3 浪漫飛行の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前