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WORDS BANK
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WORDS BANK-2

『有効期限が切れています』

有効期限?なんだそれ。そんなのきいてない。何かの間違いだと自分に言い聞かせながら、もう一度ログインを試みる。駄目だった。 おかしな汗で手のひらが濡れた。口の中が乾き、心臓が早鐘を打ち始めた。トップページへ戻って規約を読んでみると、確かに有効期限について書かれていた。期限は、一年。既に切れている。しかも規約の内容はそれだけではなかった。
『期限終了後は、当サイトのお客様のために、登録者の皆様の文章能力をいただきます』 どういう意味だ。
もうろうとした意識の中で、僕は首をひねった。そんなことよりも、新作を書かなければならない。そういえば出版社の人が、執筆中だということを大々的に宣伝しておくと言っていた。これで完成しませんでした、なんてことになったら、一体僕はどうなるのだろう。 どうする、どうすればいい。
パソコンの前で頭を抱えながら僕は唸った。 こうなったら、自分の力で書くしかない。震える手でマウスを握り、ワードを開く。自分での執筆は、実に一年ぶりのことだ。
画面上の原稿を見ると、僕はおかしな違和感に襲われた。
「あれ?」
思わず声に出す。
浮かばない。ストーリーどころか、いっさいの文章が、冒頭すら、浮かばない。頭の中は真っ暗で、一文字も浮かんではこなかった。 不意にさっきの規約のことを思い出した。
『登録者の文章能力をいただきます』
・・・嘘だろ。
そんなはずない。そんなこと、どうやったってできっこないじゃないか。しかし、どんなに頭を働かせても何も浮かばない。思いつかない。多分、脳みそを絞ってもそこからは何もでてこないに違いない。空気が薄いのが、動いてもいないのに息が切れる。キーボードに手を載せたまま、凍りついたように真四角の画面を見つめた。そこには永遠に書き込まれることのない白紙の原稿が広がっていた。


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