第７話『ハロウィン余興・小麦粉取り』-2
すべての白塊が倒れたところで放送が入る。
『ただいまをもって、すべてのハロウィン・パーティゲームは終了しました。 １位は、そのまま寮に戻りましょう。 ２位は『ナッツ・クラック・ナイト』でクリチンポに命中するまで帰れません。 ３位は『トイレ・マミー』になって、１位の寮で２日間の人間便器を勤めることになります。 それではこれから結果発表に移ります』
『ナッツ・クラック・ナイト』？ 『トイレ・マミー』？？
どちらも始めて聞く単語。 語感から内容を予想しようとするも、放送が淡々と進行する。
『事前競技、トリック・オア・トリートで一番沢山ごちそうを貰ったクラスは、２組です。 以下、３組、１組と続きます』
『第１競技、アップル・ダックで一番リンゴを獲得したクラスは、２組です。 以下、１組、３組と続きます』
『第２競技、スナップ・ドラゴンで一番葡萄を食べたクラスは、２組です。 以下、１組、３組と続きます』
『第３競技、小麦粉切りで一番勝ち残ったクラスは、２組です。 以下、１組、３組と続きます』
『以上を持ちまして総合１位は、２組。 総合２位は、１組。 残念ながら最下位は３組に決まりました。 みなさん、競技を通じて楽しい時間を過ごせたことと思います。 勝者はより気持ち良く、敗者は気持ちを切り替えて、それぞれ夜を満喫しましょう』
学園生は、特に学外の人々に対しては感情を露わにしないよう厳しく躾けられる。 少なくとも私が学園に在籍したころはそうだったし、順位発表を聞いても歓声や落胆の声が上がらないところをみると、当時の躾は今も健在なんだろう。
『では、２組のみなさん。 代表はリンゴと干し葡萄を本部に取りに来るように。 それ以外は寮に戻りましょう』
『１組のみなさん。 代表は栗と胡桃を本部に取りに来るように。 それ以外は『ナッツ・クラック・ナイト』に向けて篝火を起こしましょう』
『３組のみなさん。 代表は全員分のトイレット・ペーパーを取りにくるように。 それ以外は校門脇に移動した上で待機しましょう』
ぞろぞろぞろ。 放送の指示に従い、生徒それぞれが別行動に入る。
いい加減夜も更けてきたが、私としては知らない単語を解決する方が優先だ。 １組と思しき集団は、周囲の草や板切れをあつめ、ロータリー中央に積み上げている。 『ナッツ・クラック・ナイト』がどんなものか確かめないうちは、私は帰るつもりはなかった。