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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♥勝手に浮かんでくる男♥-6

そう、パパが不倫相手とホテルで一夜を過ごそうとしている日は、あたしの誕生日だったのだ。


ボンヤリとパパを見ると、泳いだ視線がやっとこちらにフォーカスされる。


平静を装っているけど、明らかに目の奥が動揺していて、昨夜の吐き気が込み上げてきた。


「……許さないから」


「え?」


本当に、自分しか聞こえない声でそうパパに言ったあたしは、いつもどおりの笑顔を浮かべた。


「やだぁ、この歳になっても家族でお祝いなんてしてくれなくていいよ。あたし、その日予定入れてたし」


ニッコリ笑うあたしを見て、ホッと胸を撫で下ろしたような表情のパパは、


「ホント、悪かった。仕事でどうしても抜けられないんだ。その代わり、欲しいもの後で何でも買ってやるから」


と顔の前で拝むみたいに片手を上げた。


「……楽しみにしてる」


もう、この人には嫌悪感しかない。


仕事って、ホテルで女とセックスすること?


あたしの誕生日は、他の女とセックスする事で頭がいっぱいになって忘れてたんでしょう?


顔を背けた途端、顔が真顔になる。


この人は、物で釣ればその場をやり過ごせるって思ってる。


だから「欲しいものは何でも“買ってやる”」なんて言えるんだ。


ねえ、パパ。あたしが欲しいものはお金で買えないものなのよ?


あたしが欲しいもの、それは……。




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