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ハンナの日記
【アイドル/芸能人 官能小説】

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第2話『ハンナの日記』-1

第2話『ハンナの日記』



8月○日。

 10年前から付け続けた日記が今日から新しい日記帳になった。 これで6冊目だと思うと『継続は力なり』を改めて感じる。 ただ、日記をかくテンションは、相変わらず上がらない。 学校はつまらないし、大人たちもずっと怒ってばっかりだし、聞こえてくるニュースも耳を塞ぎたくなるのが多すぎるし……何よりあたしが『牝』だから。 これまでエントリーシートの性別欄は『男・女』だったのが、先週から『男・雄・牝』の3種類に変更された。 一定の偏差値を充たせば『男』、それ以外の男性が『雄』、女性は無条件で『牝』……全く持って釈然としない。 能力で性別を細分化するなら、せめて『女』という項目が『牝』以外にあってしかるべきだ。 

 5年前に政府が『ニホン』の山猿共に乗っ取られて、あたし達の祖国が『自治領』なんて不甲斐ない体制に押し込められてからこちら、毎月嫌な制度が増えて、どんどん暮らしにくくなっている。 いや、正確にいうと、何事も便利で機能的になってはいるんだけれど、毎日の生活自体がミジメになってゆく感じ。 暮らしづらくなっているのを証明するデータなんてないけれど、過去の日記に登場するあたし自身が今より断然楽しそうで、これが何よりの証拠だと思う。 物価は下がったし、治安はよくなったし、新しい娯楽も増えた。 だけどあたしは楽しくない。

 あ〜あ、『ニホン』の山猿共に隕石が落ちて、全員一瞬でいなくなったりしないかな〜。



8月✕日。

 学校がつまらない。 数学が『クモン式』になって、難しい問題は解けるようになった。 だけど数学が詰まらなくなった。 国語が『ドリル式』になって、たくさん漢字を覚えた。 でも元々あたし達が使っていたアルファベットじゃないから、勉強していてイライラする。 理科が『アクティブ・ラーニング』になって、グループで勉強するようになった。 その代わり実験がなくなって、ずっと缶詰の中にいる気分だ。 社会は『現代史』が中心になって、つまり『ニホン』がずっと主役だ。 あたし達のご先祖様が活躍する場面がない。 面白いわけない。 クラスの半分くらいは真面目に勉強しているけど、本音はちょっぴり呆れている。 つまらないならつまらない、腹が立つなら寝ちゃえばいい。 ちょっとでも偏差値をあげて、就職を良くするためだけに勉強して、そんなんでいいの? 別に働き口なんて関係ないし、もっと自分に正直になれよって、そう思っちゃうあたしの方が変なのかな……。



8月△日。

 学校がますますつまらない。 男子は『ニホン』から来たアイドルに夢中で、あたしが聞いたこともないようなグループについて熱く語っている。 その子らが載っている写真を見せて貰ったら、確かにみんな美人で、スタイルもよかった。 身長はあたし達の方が高いけれど、男子連中に言わせれば、小さいくらいが丁度いいらしい。 ふーん、あっそ。

 女子は女子で、『日流』とかいうらしいけど、ニホン人の男性に瞳をキラキラさせている。 首相代行の『イトウ・ハクブン』派や財務大臣代行の『オオクボ・リツウ』派に分かれて、どっちが仕事ができるかとか、どっちがカッコいいかとか、心底どうでもいい話題が教室中で飛び交っていて、聞いてるだけで頭がおかしくなりそうだ。 確かにニホン人は素敵だけれど、あたしにとっては祖国を侮辱する存在でしかない。 だから好きになんてなるわけないし、呼び方も『山猿』で十分と思う。 あーもう、それもこれもあたし達の男に碌なのがいないせいだ。 ほんっと、見渡してもカッコいい男子がいない。 あたし達の男連中にいいたいのは、女子から見放されるのが悔しいなら、誰か1人くらいニホン人に勝ってみろっ、てこと。





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