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ハッカ飴
【ボーイズ 恋愛小説】

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スペアミントガム-1

谷町健吾は、特に美男子と云う訳でもなかった。
十人並と云うやつだろうか。
顔が悪い、とからかわれてしまう訳でもなく、かと云って知らず目を奪われるような美しさがある訳でもない。

眉は太く短髪で、汚くないけれど、寝癖がある訳ではないけれど余り髪型に気を使うようにも見えない。

ズボンを下げる事もなく、けれどもブレザーとシャツをかっちりと着る事はなく、ボタンを少し開けている。
やたらと生真面目そうでもなく、下品さもない。

僕は服を着崩すのが好きにはなれないから、その点で谷町健吾には好感を持った。

彼は妹である谷町ユリと何か話すと、ぺこりと一礼して帰って行った。
礼の仕方は妹そっくりだった。

ユリは恥ずかしそうに部員達にすみません、と云ってから、健吾が来る前に座っていた席に戻って部長と話し始める。

僕はと云えば薄暗い気持ちのまま、カンバスに筆をあてているだけ。

少し気に入ったところがあるからと云って、すぐに健吾に恋をした訳じゃない。

よくゲイだと解ると「襲われそう」だとか云う人間も居るけれど、そんなバカな話はない。

そう思う男性は、女性と見るや襲うのだろうか。
そんなのはノンケもゲイもビアンも関係ない。単なる人でなしだ。

ゲイだって、恋愛をするのだ。恋愛をして、気持ちを通わせたくてキスもするし、もっと深い行為もするだろう。
その気もない人に無理矢理するとしたら、その人はゲイでなくてもそうしているだろう。

婦女暴行みたいな卑劣な犯罪をする人間は、お前らと同じ異性愛者じゃないか。
僕はいつもそう思う。
少なくとも僕はそんな事はしない。

恐らくは一生に何度も片思いをするだろうし、その思いが満たされる事は少ないだろう。
だからって力づくで体を支配する―――なんて、そんなのは嫌だ。考えただけで虫酸が走る。

僕はただ、愛する人と笑っていたい。苦しい事や悲しい事があった時に、その手を握っていてあげたい。
社会からも法律からも認めて貰えない関係だとしても、僕は、ただ穏やかに生きて行く事を望む。

両親はやっぱり悲しむだろうけれど、他人を傷付けるなんて僕はまっぴらだ。

でも。

僕はユリを偏った目で見て、あんな態度をしてしまった。
話も聞かず、間違った態度じゃないか、ときちんと指摘もせず。
ただ腹を立てた。
そんな自分に、誰かを批判する事なんて出来るんだろうか。

カンバスに塗る色が、自然と薄暗くなる。

なんで僕はゲイに生まれたんだろう。
どうして皆と違うんだろう。

ユリは、そんな気持ちを味わった事があるんだろうか。
可愛い、綺麗な、あのユリが。

僕は薄暗い嫉妬心から逃げ切れずに筆を置いた。今日はもう、ここに居たくなかった。
ちょっと気分が悪いから今日は帰ると云って、僕が昇降口に行くと谷町健吾が居た。


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