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ハッカ飴
【ボーイズ 恋愛小説】

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ハッカ飴-1

僕は、どうやら同性愛者だ。
物心ついた頃から良いな、と思う相手は皆男だったし、女性を全く性的な対象として見られない。
小さい頃から僕は自分が人と違っている事に気付いていた。
異質だという事実は、幼い子供にもよく解る。いや、子供だからこそ余計に鋭く、重大で恐ろしい事だと感じる。
違いは悪い事じゃないし、違っているから劣っている訳でもない。
人と違った人間になったのも、個人の責任じゃない。
バカにしたり、蔑んだりする人間も、優れているとか選ばれたとかそんな立場には居ない。
全てたまたまだ。
線の右に落ちるか、左に落ちるか、線の上に落ちるか。
そこに意志なんてあるとは僕は思わない。

僕は選ばれた訳じゃないし、選ばれなかった訳でもない。
ただ、線の上に落ちただけ。
それでも人にとって違いとは、必ずと言って良いほど優劣に繋がる。
なら、男性しか愛せない僕は劣っているんだろうか。
女性を愛するという性質は、優れた素晴らしいものなんだろうか。
ただ、僕がどう思おうとそれが人に通じる訳じゃない。
理屈じゃ、ない。
僕が向き合う、他人の感情は。

高校生になった今、周りの友達は当たり前にアイドルの誰それが良い、誰とヤりたい、そんな話をしている。
でも僕はその気持ちが解らない。
誰かと肌を重ねたいという気持ちがない訳じゃない。
けれど、その相手はいつも男だ。
胸をときめかせて見つめるのも、手を繋ぎたいと思うのも、隣に居たいなと思うのも。
だから、僕はゲイなのだ。
皆とは違う。
ネットを探せば、同性愛者は思った以上に多く居る。
同じように悩んで苦しんでいて、その悩みを打ち明けあったり。僕だって励ましてもらった。
僕は一人じゃないよ、って。
それは嬉しかった。
それでも僕は学校で孤独を味わう。
女の子が好きな振りをする。女の子に欲情する振りをする。
おかしくないように、周りを見ながら、摺り足で話して行くのが僕の毎日。
男が好きだとバレたら、もらう言葉は決まっている。
「寄るな」と「気持ち悪い」だ。
僕はまだバレた事はない。
でもバレたり、好きだと告白したらどうなるか言われなくたって肌で感じる。
悪くなくても酷い言葉は普通に浴びるのが世の中だ。
今のところは、彼女が出来なくても怪しまれてはいない。
僕は口下手だから、単にモテないと思われているのだ。
ただ、今は良くても、僕は将来どうなるんだろう、と思う。
独身主義の人も居るし結婚したくても出来ない人も居る。
結婚するしない、が勝ち負けだなんて僕は馬鹿馬鹿しいと思ってる。
でも、やっぱり僕の気持ちなんて関係ないんだろう。
「どうして結婚しないの?」っていつか聞かれるだろうし、「子供は?」とも聞かれるだろう。
それがいかに無神経で無自覚で鈍感な疑問だとしても、それと質問する人間の有無は別だ。

僕は一生、人と違う事に悩んで行くのだろうか。
悩んで、気にして、誤魔化して行くんだろうか。

僕はいつも悩んでいる。春から始まったばかりの高校生活をどう乗り切るか、将来どう生きて行くか、そんな事ばかり考えている。

陰鬱で、その割に明るい初夏のある日。

僕は谷町ユリに会った。
(終)


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