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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♠狙われた女♠-8

「うわあっ!」


松本の登場で、無意識のうちに身体に力が入っていた俺は、その棒金のフィルムを剥がした所で手がツルリと滑ってしまったのである。


賑やかな店内も、俺の声と硬貨が散らばる音に、一瞬静まり返ったような気がした。


「天野くん、大丈夫!?」


咄嗟に古川さんがカウンターに入ってきて、さらには、もう上がりの時間なのに小野寺くんまでしゃがみ込んで100円玉を拾い始める。


二人の優しさに鼻の奥がツンと痛くなってくる。


ホントに俺、情けねー……。


松本の前で失態を晒してしまった自分が悔しい。


さらには恋敵の小野寺くんにまで、自分のミスをフォローしてもらってしまったことに、泣きそうになっていた。


もうみんなの顔がまともに見れなくて、硬貨を拾いながら顔を隠していると、頭上からケラケラ笑う声が聞こえる。


「まったくドジねぇ」


松本はそう言って俺の隣にしゃがみ込んでは小野寺くんと古川さんを順繰りに見つめた。


「ここはあたしと天野くんでやるので大丈夫ですよ。ほら、小野寺くんは上がりでしょ? 小夜さんもウォッシャーたまってるし、早く戻って」


ニッコリ笑う松本に、古川さんも小野寺くんも素直に引き下がった。


確かに、バイトが全員カウンター内でしゃがみこんでいる光景は、お客さんにとっては好ましいものではない。


古川さんはスクッと立ち上がって、あのほんわかした笑みを俺達に向けた。


「うん、じゃあここは里穂ちゃんと天野くんにお願いするね。あ、小野寺くんはお疲れ様。それと天野くんはその仮締めが終わったら休憩入って」


ウォッシャーだけじゃなく食器返却口も満杯になっていたことに気付いた古川さんは、早口で俺達に指示をすると、急いでウォッシャーの方へ向かい、溜まっていた食器を片付け始めた。


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