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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♠狙われた女♠-7

その彼の答え方で、俺の疑惑は確信に変わった。


あの意味深な笑み。カノジョという神聖なポジションを“そんなの”呼ばわりするチャラい口調。


やっぱり、この男、相当な遊び人だ!!


ちらほらお客さんが並び出し、二番目に並んでいる若い女の子のお客さんにメニューを渡す小野寺くんを、俺は『恐ろしい子!』と言いたげに白目を向いて眺めていた。


なのに、当の本人は涼しい顔して接客中。


一番最初に並んだ、中年のサラリーマンにドリンクとフードを提供し終えた小野寺くんは、


「お会計お願いします」


と俺を促し、その間に次の客のオーダーを聞いていた。


すっかり遅れを取った俺は、会計待ちをしている中年サラリーマンの『早くしろやタコ』と言わんばかりの冷めた視線を浴びながら、慌ててレジを打ち始めた。








「おはようございまーす!」


あの細く高い声を聞いただけで、ドッキーンと胸が高鳴ってしまう俺は、もはやパブロフの犬だ。


時間は17時に5分前。17時が近くなるにつれ、俺の心臓も早鐘を打ち始めていて、松本の登場でそれがパーンと弾けたようだった。


まともに彼女の顔を見て挨拶も交わせないくせに、チラチラと気付かれないように松本の姿を追いかける。


仕事用にラフに束ねた髪は、松本の小さな顔をより強調させていて、つくづく俺は思うのだ。


やっぱ、可愛い……。


そんな彼女に、フロアの古川さんが「おはよ」と笑いかけ、ドリンクの小野寺くんが目を細めて笑いかける。


そして、俺はレジの仮締めに集中しているフリ。


ちゃんと挨拶できなくて情けないのはわかってる。


でも、振られて、バカにされて、小野寺くんの家に泊まりに行くと聞かされた俺は、どういう振る舞いをしていいのか、さっぱりわからねぇんだ。


まだ好きなのは変わらないのに、バカにされると悪態吐いてしまって、自分の振る舞いを後々気にしてしまって。


あー、どうして俺は松本の前だとこんなにも怪しい人間になってしまうのか!


半ばヤケになりつつ、ほぼ仮締めを終えた俺は、コインカウンターからレジに硬貨を戻し、足りなくなっていた100円玉を補充しようと棒金(硬貨が50枚単位でビニールで包装されているヤツだ)のフィルムを剥がしたところで悲劇は起こった。








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