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祭りの日の儀式
【若奥さん 官能小説】

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種の岩伝説-2

 焔民の理念の一つとして、自主性が重んじられている。これは参加から行動まで個人が自主的に行動し、楽しく参加することが長続きするという考え方によるもの。
 人間誰しも気持ちのテンションにムラがある。やる気満々の時もあれば、今ひとつやる気が起きない日だってある。そこは個人の主体性に任せて、参加できる時に参加する。強制は一切しないことが運営理念の一つになっている。
 会の中で最低限の礼儀や節度を守ることだけ気を付けさえすれば、それ以上の強制や抑圧は極力行わない。運営上必要な役割分担や、注意喚起は行うけれど、自分たちで動くことが基本。
 そのお陰か、退会する者はこれまで誰もいない。定例会の出席状況も比較的高く、討議の中での意見のぶつかり合いはあるが、特段大きな揉め事もない。会の運営状況は非常に上手くいっていると言ってもいいだろう。
「今日の討議のメインは、今年からの新企画でもある旅行会社のツアー客用の専用シートについてです」
 これは、テレビでの露出以降多くの観光客がやって来るようになった時からの課題であった『観光客をいかに上手にエスコートするか』の解決案の一つである。
 本来この町の火祭りは、ゆるやかに運ばれる火の行進を遠巻きにゆったりと見るのが古くからの観方。
 それが、メディア露出後のフィーバーで、流儀を知らない観光客たちが近寄ってみたり、火が欲しいなどと騒いだり、フラッシュを焚いたりとそれまでの厳かな祭りが一転ざわざわとした祭りになってしまった。
 昨年は事前喚起や当日の注意喚起などで緩和はされたが、それでも一時期の静かな祭りにはまだ戻りきっていなかった。
 もっと厳しく注意することも対応策として挙がったが、あまり厳しくしてもトラブルや観光客減少に繋がっては元の木阿弥。仕方なしにやんわりと注意するまでに止まっていた。 
しかし、それまでの静かな祭りに戻すべきだという声が徐々に強まり、実行委員会としても放っておくわけにはいかない状況になっていた。
 そこで焔民でも問題解決案を練った所、旅行会社と提携し火祭りツアーを組んで、ツアー客には最初から観易い場所に席を設けてしまってはどうかという案をまとめた。
 委員会内からはそんなことをしてもといった言葉も聞かれたが、他に有力な案も挙がらず、とりあえず今年だけでもやるだけやってみるかと採用されることになった。
 ツアー会社の交渉は、隣街で旅行会社を経営している親戚がいる栗原雄二が担当することになった。栗原本人も、理美容品販売会社の営業をやっているだけに交渉術には長けている。
 結果、大手ではないけれども地方ではそれなりに有名な旅行会社とタイアップすることに成功。現時点での応募者数も順調に伸びてきている。
「今年からのイベントだから、想定外のことが起きるかもしれないけれど、ここまでもってきたんだから、なんとか成功させたいな。そうすれば実行委員会でももっと評価が上がるだろうからさ」
 会長の柏もこの新イベントの成功に賭けている。自分たち若手が成果を挙げて、実行委員会の中での発言権を少しでも強めたい目論見があるからだ。
 実行委員会を牛耳りたいとか、そんなちっぽけな考えではなく、いつまでも古すぎる体質の人間が権力を持ち過ぎるのが良くないと常日頃思っている。
 若手集団『焔民』を立ち上げたのも、そんな意図があったからであり、ここまで順調に育ってきていることも間違いない。
 
 この日は会員の奥様達も一緒にやってきて、夫たちの会議中は外のカフェテラスで女子会を催していた。
「みなみちゃんの所で定例会やってくれると、これが出来るからいいよねぇ」
 会長夫人で一番年上の柏真理恵がワインクーラーを飲みながら話を切り出した。
 定例会は、会員が持ち回りで主催する。
「ホント、うちなんかだと男たちはいいけど、女たちはちょっとねぇ」
 蕎麦屋を切り盛りしている富樫源太夫人の聖子が呟いた。
「聖子ちゃんの所はうちよりましよ。おつまみなんかは手軽にパッパッと出来ちゃうし、何といっても広いじゃない。それだけでも十分よ。うちなんかじゃこんなに人が集まれないもの」
 元村夫人は高校教師。商売をしていない戸建ての家では大人数の集客は不可能。そんな時は、持ち回り担当者が責任を持って、公民館なり集会所なり会議が出来る会場を手配することになる。
「そうそう、普通の家ではこんな洒落た風にはできないって。あ、これ熱っついけどうんまい」
 いつも、グラマラスと表現するにはやや無理があるボディを曝け出すような露出の多い格好を好む水橋美也子が、海老のアヒージョをホフホフしながら頬張っている。
 焔民の定例会は、月に一回開催される『役員会』と二月に一回開催されている『定例会』がある。今日の会合は、全員が出席する定例会。祭り直近の会ということもあって、いつもよりも高い出席率だ。

「みなみちゃんも完全にこの町に溶け込んだわよね」
 みなみがルッコラと生ハムのサラダを取り分けていると、少し酔った真理恵が言った。真理恵は酒好きだがあまり強くは無い。
 「ありがとうございます。これも皆さんのお陰です」
 この地に外のものとしてやって来て早3年。夫が町の集まりに顔を出していることもあって、思いの外早く馴染んだなとみなみも思っていた。特に、今日集まっている女性たちは、若手女子の中での中心人物たる面々である。そのような人たちと早々に知り合えたことはラッキーだった。
 「結輔君はこっちで生まれたんだっけ?」
 長男と保育園のクラスが一緒である美沙樹ちゃんのママ、栗原今日子が聞いてきた。
「ううん。東京で生まれて半年ぐらいでこっちに来たから」
「もう一人作らないの?」
 真理恵が聞いてきた。
 今日子もうんうんと頷く。今日子は美沙希を含め3人の子供がいる。ここにいる他のママメンバーも一人っ子家庭はいない。


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