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ニカイノカノジョ・サンカイノカレシ
【OL/お姉さん 官能小説】

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カレノヘヤ-1

 9階の倉庫を出て、化粧室へ駆け込んだ。最近の田中課長は、2人きりの時だとちょっと駄々っ子になる。そんなところが可愛くもあるのだけれど。
 個室に入り、ショーツを降ろして呆然とした。情けなくなるほど、潤ったそこに溜め息。あの場で攻められたりしたら大変なことになっていただろう。声をこらえる自信も周りを汚さない自信もない。
 今日は作業だったし、まさか誘われると思わなかったから、ブラもショーツもスポーツタイプのものだ。一緒に帰らなくてよかったのかも。食料よりも先に下着と、また泊まっていけと駄々をこねられた時のために一通り買い揃えなくては。冗談抜きで、お泊まりセットをロッカーに常備しておいたほうがいいかもしれない。





 職場を出ると、田中課長のアパートとは逆方向に歩きだし、駅ビルへと向かった。一緒に休日出勤したメンバーからの飲み会を断った手前、みんなに遭遇したら気まずいが致し方ない。
 お気に入りのショップで明日の通勤用の服と靴を即決し、プチプラがウリのランジェリーショップでブラとショーツのセットを2組購入。バラエティーショップでポケッタブルのボストンバッグと、トラベル用の化粧品やらストッキングの換えやら細々したものを買い求めた。制服用のブラウスはロッカーに予備があるから問題なし、と。
 地下に降りて、サーモンのマリネ、ローストビーフのサラダ、最近課長のお気に入りだという唐揚げを購入。お刺身にしようかと思ったのだが、お昼にプリンを届けてくれた時に課長が持っていたのは、ここに入ってるお寿司屋さんの袋だったことを思い出してやめておいた。
 本当なら、こうやって鍵を貸してもらって先にお邪魔するのなら、自分で何かしら作って待っていたいのだけれど、課長の部屋には調理器具と呼べるものがまな板と包丁しかない。かろうじて電子レンジと電気ケトルはあるけれど、炊飯器すらない。
 かなり大荷物で、それでも途中コンビニで缶ビールと缶チューハイ、それに煙草を買いたしてから課長のアパートを目指す。職場から5分とかからない、新築のアパート。そこから5分ほど歩いたところに、数ヵ月前まで私が住んでいたアパートがある。あのアパートにいた頃はまさか課長のアパートにお邪魔するようになるなんて想像もしたことなかった。





 誰ともすれ違わずに、3階の奥の方にある課長の部屋にたどり着いた。預かった鍵で解錠し、扉を閉めたらすぐに内鍵をかける。スニーカーをなんとか隅っこに揃えてから、お邪魔しますと小さく呟いた。教わった通りに警備システムを解除して、食材と鍵、預かったお金はテーブルの上へ、それ以外のものは部屋のすみに置かせてもらって、ようやく一息ついて辺りを見回す。
 相変わらず、片付いた部屋。土日もほぼああして休日出勤して、毎日残業してるのに、掃除も洗濯もかなりマメにこなしているらしい。
 食材や飲み物を冷蔵庫に勝手にしまい、買ってきた洋服の類いのタグを始末する。泊まっていけと言われなかったらバカみたいだけど、店が閉まってから慌てるのはもう沢山。そう思いながらすぐには使わないものはボストンバッグへしまう。
 課長の好きそうな、白地に淡いピンクの刺繍がはいったブラとショーツのセット、シャンプーやら何やらと一緒に、干されていた青いストライプのワイシャツを拝借してバスルームへ向かう。スマホを確認したがまだ連絡はない。きっと1時間で終わったとしても、部長に捕まったりなんだりですぐに帰って来れなそうな気もするのだけど。棚の中からバスタオルもお借りして、手早くメイクを落とすとシャワーを浴びさせてもらった。何だか主のいない部屋でシャワーを浴びるのは、かなり不思議な気分。
 新しいブラとショーツを身につけ、ワイシャツのボタンを止めていたら、課長からラインが入った。これから職場を出るらしい。何か買い忘れたものあるか?と。買ってきたメニューを返信すると、可愛らしいスタンプが返ってきた。洗面台のドレッサーに写る、だらしなくゆるんだ頬。髪はタオルドライにして、化粧ポーチに常駐しているバレッタでまとめ上げてみる。着ていたものをショップバッグに一纏めにして、ボストンバッグに詰め込んだところでタイムオーバー。再びラインにメッセージ。

『ついたぞー、開けろー』

 急いで玄関に向かい、スコープで確認してから鍵を開ける。扉の隙間から滑り込むようにして入ってきた課長は、満足そうな笑みで私を抱きすくめた。

「おかえりなさい。鍵、閉めないと」

「ただいま。ルカの風呂上がりの匂いを堪能するほうが先」

 首筋に顔を埋める課長の後頭部を撫で上げる。先週切ったというか刈ったばかりの髪の手触りが好き。

「それ、何だかちょっと変態チックです」

「いいの、変態だから」

 いいんだ、と言いかけた唇は塞がれ、壁に押し付けられた。

「あー、ブラしてるー」

 胸に触れたとたん、離れた唇は不満そうに尖っている。

「してますが、何か?」

「どうせすぐ取られるのに?」

「ご飯とビールが先じゃないんですか?」

「ルカを食べるのが先」

「はいはい、まず鍵かけて、お荷物置いてからにしましょ?」

 まだ不満そうな顔をしながらも、後ろ手で鍵をかけてくれた。部屋に入って荷物を置いた途端、もう一度抱き締められた。課長はキス魔だし、抱きつき魔だ。抱き締められた次の瞬間には唇を塞がれる。課長のキスは煙草の味。でもイヤじゃない。キスをしている間も、せわしなく課長の手は動き回る。頭を充分に撫でてくれて、背中も同じように優しく撫でてくれるのに、お尻へ辿り着くと途端に荒々しくなる。

「その格好、いいな」

 さすがに呼吸が続かなくなって、一度唇が離れると課長はそう言った。


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