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夢姫伝説
【SF 官能小説】

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第4話-2

彼女の言葉で周囲がザワ付いた。

「凄いですよ彼女、一目見ただけで、相手の健康状態を見抜くのですから」

「私も、子供の口の中を見ただけで、健康状態を言い当てられたわ」

「医学の知識もあるのかしら…あの人?」

「誰ですか、そのオダさんと言う人物は?」

「こちらのマンションに住むオダ・シンと言う人物の恋人です。彼はオタクっぽくて、周りから一生独身だと思われたのですが…最近彼に恋人が出来たのです。その恋人さんが美人で、とても知的で気品のある方なんです」

「モデル並みに綺麗で、それでいて一途なんだから…相手のオダさん羨ましい限りよね」

「頭も良くて、最近は勉強を教えて貰う子供達も多いわ、ある意味…マンションの人気者だわ」

ムラタは、サラサラとメモ書きする。

「それはアンドロイドでは無いですか?」

「普通の女性ですよね…あの人…」

「アンドロイドと言う感じには、思えないですね」

「なるほど…分かりました。色々とありがとうございました」

ムラタは一礼して、その場を去って行く。
シライシが側に来てムラタに話し掛ける。

「どうでしたか?」

「面白い情報が得られたよ」
ムラタは満面の笑みを浮かべて言う。

「さて…次は目的地へと向かおう」


2人はロボカーでタナカ・コーポレーションがある本社へと向かった。
創立僅か10年と言う短期間の間にタナカ・コーポレーションは小さな町工場から巨大な工場へと飛躍した。
現在では日本企業の屋台骨の一角を支える有名メーカーへと成長し、全国に1万人もの従業員を抱える巨大な生産業でもあった。
タナカ・コーポレーションの建物に入ると2人は、記者と言う事で事務所内に入れた。


外交関係者とのオファーが取れて彼等は、待合室へと案内される。
待合室で2人が待っている間、若く綺麗な女性が2人にお茶を入れて持って来た。

「代表の方が来ますので、もうしばらくお待ちください」
と、女性は一礼して立ち去って行く。

「綺麗な人だ…」
シライシは、見惚れて女性が立ち去ったドアの方を見ていた。

「『疑似人間』なんかに見惚れるな」
ムラタはシライシに一喝入れた。

「え…今のアンドロイドなの?」

「そうだ…」

「でも…見た目普通の人でしたよ」

「アンドロイドは、ほぼ全て無表情だ。人間とほぼ変わらないように出来ても…人間の様な感情までは作れないのがアンドロイドだ。所詮、作り物は作り物でしか無いのだ…」

「じゃあ…感情が表現出来たらどうするの?」

「それは、もう…一種の生体とも言えるだろう…だが、俺が知る限り、そんなアンドロイドは未だ見た事が無いね」

2人が話しをしているとドアが開き中に背丈のある男性が入って来た。
メガネを掛けて、やや茶色に染まった髪をした40代くらいの男性は軽く笑みを浮かべて、2人の前の椅子に腰を下ろす。

「初めまして、自分は本社工場の責任者を務めます。キクチ・カズヤと申します」

「どうも…私は『文明時代』の記者をしてますムラタ・ヨシヒコと言います」

ムラタは、キクチと言う男性に一礼してから話を始める。

「本日、御社に来たのは数日前…深夜、そちらの会社の輸送トラックが転落した事に関して詳しく説明を、お聞きしたいのですが…」

「その件に関しては、一般報道した様に、物資は全て回収されまして、全て終わりましたので、こちらから申し上げる事はありません」

「ちなみに、どの様な物を乗せて居たのでしょうか?」

「本来ならば、当社の新製品となる物でしたが…残念ながら、今回の一連の出来事で、全て水の泡となり、現在は新たな製品開発に取り組んで居ます」

キクチのスキの無い発言に、ムラタは少々焦り気味となった。少しでもボロが出れば…と考えていたが…ムラタから話す言葉が見つからなかった。
それを見ていたシライシがキクチに話し掛ける。

「あ…スミマセン、自分も記者を務めるシライシ・カズオと、申します」

「はじめましてシライシ君」

「あ…ハイ、どうも…」
軽く一礼してからシライシは話を始める。

「実は…数日前にある駐車場で、何物かが壁に大きな穴を開けたのですが…、とても人間技とは思えません。アンドロイドがしたのでは無いか…と考えられますが…」

シライシはポラロイドで撮影した写真を見せて言う。

「なるほど…確かに人間技では、あり得ない破壊ですね…しかし、これとアンドロイドとの関連性が理解出来ませんね、一般販売されているアンドロイドは、人間の数倍の威力はあります。しかし…彼等には機能を制御させるリミッターが掛けられて居ます。非常事態で無い限り、リミッターが解除される事はありません。それに当社の製品が何らかの形でリミッター解除された場合は記録が残ります。残念ながら、貴方が申し上げる数日の間にリミッター解除された記録は当社には無いです。もし…疑問に感じる様であれば、名簿を作って差し上げますが…」

そこまで言われるとシライシからも、打つ手が無くなる。

「宜しければ、これで御開きさせて頂きますが…」

そう言ってキクチが席を立とうとした時ムラタが最後に一言声を掛ける。

「あの…最後に1つ聞きたいのですが…オダ・シンって言う方、ご存知ですか?」

その言葉にそれまで仮面の様に平常心を保っていたキクチがピクッと表情を動かした。

「当社は常にお客様達のプライベートに関する個人情報は、一般には公開しませんので、お答え致しません」

「そうですか…実は、最近…彼が恋人が出来たと聞いたのですが、私にはアンドロイドでは無いかと思っていたのです。それでちょっと聞いて見たのです」


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