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大沢商事の地下室
【SM 官能小説】

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ジェンダーフリーの闘士-1

「門村さんよ、そろそろまた」
「ショーですか? 生贄をご所望というわけでしょう?」
「そのとおりなんだがね、いないかね?」
「う〜ん、今のところはちょっと……」
「そうか、残念だよ」
「いや……あれはどうかな……いやいや、止めておきましょう」
「話しかけておいてなんだ、気になるじゃないか」
「サラ金の取立てをしてもどうにもならない女が居るにはいるんですが」
「そういうのをいつも用意してくれたんじゃないのかね?」
「ですが、ちょっと普通じゃないんで……」
「普通じゃないのを何度も用意してくれただろう?」
「まあそうなんですが……ジェンダーフリーってご存知で?」
「ああ、あまり詳しくはないがね、男女平等ってやつだろう?」
「まあ、それの行き過ぎたのがジェンダーフリーなんですよ」
「行き過ぎた平等か……具体的に教えてもらえんかね?」
「そうですね、例えばひな祭りです」
「女の子の節句だろう? それのどこが問題なんだね?」
「端午の節句が『子供の日』でひな祭りが祝日じゃないのはおかしいと言うわけで」
「ふむ……だが、女の子はどっちも祝ってもらえて、男の子は子供の日だけとも言えると思うがな……」
「そういう柔軟な考え方は出来ないんで……最近は看護婦を看護士と呼びますでしょう?」
「ああ、看護婦の方が優しげで良いと思うんだが……そういえばおかしいな、男を看護士と呼んで女を看護婦と呼んでも良さそうなものだが……」
「それもジェンダーフリーです、とにかくなにもかも一緒じゃないといけないんで……」
「だが男には男の役目、女には女の役目があるだろう? 例えば土方なんぞは女には出来まい?」
「ジェンダーフリー思想ですとね、それもおかしいってことになるようで……今は機械も発達しているんだから女でも土方は出来ると」
「だがな……なり手がおらんじゃろう」
「なり手のあるなしは関係ないんで……土方になりたいという女が居たら絶対になれなきゃ社会がおかしいんだそうですよ、だから土方募集を男だけに限るのもいけないし、男しか採用しない会社も悪者です」
「確かに行過ぎだな」
「そんな女ですから風俗じゃ使えません、無理にやらせても苦情の嵐になるのは目に見えてるんで……ショーも同じでしょう?」
「いやいや、そうとも限らんぞ……なにせ女王は里子だからな」
「しかし、白けっぱなしになるかもしれませんよ?」
「いやいやいや、そういうのを無理に手篭めにするのも面白いかもしれんぞ」
「勘弁してくださいよ、もう常識の通る相手じゃないんで……私から言わせれば屁理屈ですがね、なにせW大出で頭だけはいいんで、屁理屈に屁理屈を重ねてくるんですわ、結局面倒くさくなっちまうんです、なにせ自分が借金したのも、それを返せないのもみんな社会が悪いからなんだそうで……幸い額は大したことないんで、もう半ば諦めてるんですわ、それをSMショーなんぞに出して御覧なさい、後でまずいことになるかもしれませんよ」
「それもそうだな……」
「でも明確な契約書を交わしたら? どうなんでしょう」
 傍らで聞いていた幸恵が口を挟む。
「サラ金の貸付だって契約だよ」
「それは彼女自身がそれを恥ずかしいと思わないからでは? 社会が悪いせいだと言ってるんでしょう? でもジェンダーフリーの闘士がSMショーに出たなどとは、口が裂けても言わないと思いますけど」
「まあ、それもそうだが……出ると思うかね?」
「それはわかりません……交渉を私に任せてはいただけないでしょうか?」
「ああ、それは構わないし、助かるよ」
「社長は里子さんの了解を……多分腕が鳴ると仰ると思いますが」
「言うだろうな」
「契約書は私が作りますから……出来ましたら目を通していただけますか?」
「ああ、もちろんだよ……いやに熱心だね」
「ちょっと感じる部分がありまして……」

 幸恵は「女らしく、しとやかに」を口うるさい母親から叩き込まれて育ち、それを不満に感じながらも従って育った経験を持っている、母の言いなりになるのが嫌で仕方がないのだが、幼い頃からの習慣でつい立ち振る舞いがしとやかになってしまい、それを賞賛されるものだからやめられない……そんなジレンマを「下着をつけない」という思い切った手段で克服し、さらにそれを里子に見破られたことでSM体験をして吹っ切れて、今は母親の躾どおりに立ち振る舞うことも苦ではなくなった……そういう体験をしているのだ。
 ジェンダーフリーという極端な思想に凝り固まるには、それなりにきっかけがあったはず、出来ることならもっとしなやかに生きて欲しい……そんな思いがある。

 里子の返事は勿論「腕が鳴る」だった、後は自分が説得できるかだ。

 門村と連れ立って知子のアパートを訪れる……ずいぶんとみすぼらしいアパートだ。
 知子は、ドアを開けるなりあからさまに嫌な顔をする、取立ての話なのだから歓迎されるはずもないが、アポはとってあるのだ、この態度は面白くない。
 しかし今日は何故か自分と同年代の若い女性と一緒、いぶかしげに招き入れる。
 室内も殺風景を画に描いたよう……いわゆる『女の子らしい』ものは一切ない、まあ、思想が思想だからそれも頷けるが、普通は何かしら住人の趣味のようなものが感じられるものだが……。
 知子のルックスもまた味気ない、髪はポニーテールと言うよりひっつめ、前髪もたらしていない、目と鼻はまあごく普通だが、細い眉毛と薄い唇が神経質そうな印象を与える、そして銀縁の眼鏡、実用一点張りだ。


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