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離婚夫婦
【熟女/人妻 官能小説】

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突然の別れ-1

 豊川が、その一報を受けたのは、出張先の北海道小樽だった。
 昼食後、同僚と次のアポイント先に移動するため、レンタカーに乗ろうとした時に、義母の百合子から電話が入った。
「お父さんが危篤なの」
 義父の紀夫が、命の危機に関わる状態だということだった。
 紀夫の症状経過は時折耳に入っていて、転移もみられず順調だと聞いていたから、まさかと言うのが正直な感想だった。
 百合子は早口に、『癌とは別で心筋梗塞を起こしたようだ』と伝えてきた。
 もしもの可能性が高いことも付け加えられた。
 豊川は、週初めから北海道へ出張に来ていた。会社の新しいプロジェクトである、北海道進出のマーケティングとリサーチのために、道内経済の中心である札幌を起点に、近隣の市町村を精力的に回っていた。。
 連絡が入った木曜日は、小樽周辺を回っていた。この日は小樽に宿を取り、明日札幌に移動、活動拠点となる社屋候補物件を数件見学し、まとめの打合せ後、新千歳空港から帰京する予定になっていた。
 可愛がってもらっている義父の危機に、いち早く義父のそばに馳せ参じたい気持ちだったが、現状を考えるとどうやってもこの日に帰京するのは不可能。明日の夜に駆けつけるのが精一杯だった。
 百合子にもその状況を伝え、帰京と同時に病院に向かうことを伝えた。
「どうかしましたか?」
 同行している二人の部下から心配されるほど、豊川の顔は青ざめていた。
「いや、知り合いがちょっと・・・・・・な」
 仕事に実直な紀夫は、事あるごとに与えられた仕事は、最後まで真面目に責任を持ってやらなければならないと言っていた。これは警察官時代ずっと怠ることなく守り続けてきた紀夫のポリシーでもあった。
 今回任された仕事は、会社の先行きに大きな影響を与えるプロジェクトであり、これからの会社の発展の命運を握っていると言ってもおかしくない。
 そのプロジェクトに抜擢されたのだから、そんな大切な仕事をほっぽりだして紀夫のもとに駆け付けても、雷を落とされるのが関の山だ。次報がないことも状況に変化が無いことだと言い聞かせ、豊川は午後の仕事を消化した。
 小樽市内にほど近い温泉宿に着いたのは午後6時。このプロジェクトの総括責任者である常務が、明日の打ち合わせに先駆け、北海道にやって来た。
 常務と小樽駅で落ち合い、ホテルへ。本来であれば、ビジネスホテルに泊まるところであるが、慰労の意味も含めて、常務が温泉宿を手配してくれていた。
 豊川は、常務に温泉宿を手配してくれた礼を言い、義父(正確には元義父)の話を耳に入れておいた。
「このプロジェクトも週明けすぐにどうこうという話でもないし、もしもの時には遠慮なく休んでくれて大丈夫だ。何かあれば私から話を通しておくから」
 豊川は、今回のプロジェクトの抜擢も含めて、この姿常務には色々と目を掛けてもらっていた。同郷(同じ市内の出身)であることから何かと面倒を見てもらい、公私に渡って親密にしている上司でもある。
 今回の紀夫の件でも、大きな手術をして今後転移の可能性もあることを以前から話していた。そういった事情を良く知っていたため、事がスムーズに動けそうだった。
 翌日の予定は、移動と打ち合わせのみとなっている。その打ち合わせも、今回の北海道偵察の報告のようなもので、地元コンサルタント以外は、特に外部の者が参加することもなく、今回の目的は今日まででほぼ終わっていると言ってもよい。
 豊川をチーフに、部下二人と常務は宿の夕飯の際に、ささやかな乾杯をし、プロジェクトの成功を祈願した。
 夕飯の膳も残すは飯物と水菓子を残すだけになっていた。
 飯物のカニの炊き込みご飯は、一人用の焚釜で提供されている。固形燃料を使って焚き上げるタイプだ。
 固形燃料もそろそろ無くなろうかとしたタイミングで豊川のスマートフォンが震えた。
 瞬間、豊川はピンと来た。
 電話が入ったことを伝えると、姿常務も内容を察知したのか、短く頷いてくれた。離席し、廊下で画面を見ると、予想通り百合子からだった。
 豊川は、一拍小さく息をついてから電話に出た。
「晃彦さん。お父さん、ダメだった」
 この言葉以降、豊川は百合子と何を話したのかを憶えてはいなかった。瞬間、頭が真っ白になってしまったからだ。ダメかもしれない可能性は頭の片隅で準備していたし、ある程度は構えてはいたのだが、予想通りとはいえ、あまりにもショックが大きかった。
 部屋に戻った豊川の落ち込みようを見て、姿は何が起きたのかを理解した。豊川は、姿常務には事情を話したが、他の同僚にはその旨を話していなかった。
 豊川も、何事も無かったかのように振る舞ってはみるものの、いつもの状態からは程遠かった。
 飯は喉を通らず、グラスも止まった。
「所長、大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ」
 事情を知らない部下たちは、豊川が飲み過ぎたものだと思っている。
「豊川君が飲み過ぎてしまうほど、今回の事前リサーチ内容が良好だったということだろう。明日もあるし、今日のところはこのぐらいにしようか」
 姿も豊川の青ざめた表情から、ことを理解し、場の散会を促してくれた。
 豊川は、部屋に戻る姿を捉まえ、義父が無くなったことを伝えるとともに、先ほどの取り成しに対して礼を言った。
「顔を見てすぐにわかったよ。東京に戻ったら、そのまま帰ってかまわないから。明日一日だけ仕事に集中してくれ」
「お心遣いありがとうございます。義父も仕事に対しては、妥協しない人でしたから、まだ準備段階とはいえ、一区切りがつく前に切り上げてしまっては、逆に怒られますから。明日の打ち合わせはしっかりと進めさせていただきます」
 紀夫が常日頃言っている『責任・義務・権利』を頭に浮かべ、まずは自分に与えられた仕事を遂行することを第一に考えた。


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