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「やっぱりよく素性のしれない女と遊ぶなんてよくねえよ。オレ、もうナンパはしない」
ナンパ命だった前田の口から信じがたいセリフが出てきて、思わず俺は奴の顔をキョトンと眺めた。
あの前田が、ナンパ卒業のような宣言をするなんて。
かたや、あれほどナンパに抵抗があった俺が、今度は逆ナンで出会った女の子を必死に追いかけてる。
２週間前の俺達が今の状況を見たら、とても信じられないだろう。
「と、言うわけでそろそろ昼飯食べてから午後の講義に出ねえか？」
話が一段落ついた所で、奴は枕元にあったリモコンに手を伸ばして、息をするように自然にテレビをつけた。
きっと、この話を終わらせたかったのだろう、そんな気がした。
テレビの画面はニュース番組をやっていて、それがお昼前のものであることで、大体１１時半であるということがわかった。
画面には、カチッと糊のきいたシャツを着こなす女性アナウンサーが朗々と次のニュースを読み上げる所だ。
『えー、次のニュースです。S区のホテルで男性の死体が発見された事件について、昨夜、一緒にいた女が殺人容疑で逮捕されました』
「ほえー、物騒だねえ」
前田の間延びした声は、いかにも対岸の火事といった感じで呑気なものだったけど、S区はうちの学校のある所でもあるから、もしかしたら知ってる店とか映っているかもしれないと、俺も前田も身を乗り出してテレビに食いついた。
画面の向こうでは、なおもアナウンサーが淡々とロボットみたいにニュースを読み上げていく。
『逮捕されたのは、宮下結衣容疑者２１歳で……』
そこまで言うと俺は「えっ！！！」と通常では決して出ないような大声が出た。