投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

君へ
【失恋 恋愛小説】

君への最初へ 君へ 1 君へ 3 君への最後へ

君へ-2

それから時間が経つのは早かった。私の不安は消えず秋が終りに近付き彼に聞いた。
「アメリカまであとちょっとだね」
「そうだなぁ準備しないと」 彼は私を見て
「別れるとか言わないでね?」
私は動揺した。今別れるならまだ間に合うかも、苦しさが減るかもという私の気持ちを彼は見透かしていた。私は何も言えず彼の背中に耳をつけ抱き締めた。涙は我慢した。
12月になり彼の提案でぺアのネックレスを買いに行くことになった。クリスマスは彼がバイトを入れてしまい一緒に過ごせないからだと言っていた。
今思えば束縛しない彼の唯一の独占の方法だったのかもしれない。ネックレスを選ぶのに時間はかからなかった。
リング型のトップに黒のライン入りにした。シンプルな深紅の箱に包装されたそれは、とても小さく大切に感じた。
次の日が休みだったので泊まることにした。
早速ネックレスを着けてみた。彼が私に、私が彼に着けた。
「似合う?」
私がいうと彼は目を細めて言った。
「外さないで、ずっと着けてて。」
言い終わると私のおでこに軽くキスをした。
それは誓いのようだった。若かった二人の精一杯の誓い。
私は涙を堪えきれず一粒溢した。この幸せは続くのかと…

12月が終り、彼が忙しくなった。理由はアメリカ留学のための準備。
英会話と専攻している工業の勉強…高卒の私にはさっぱり分からず距離を感じた。
会う時間は減り、約束は何度か潰れた。仕方ないと言い聞かせても汚い自分が淋しがった。
彼は謝ったが、それさえ辛かった…愛しすぎて。
2月に入ると少し落ち着いたが遠出する時間がないので大体は渋谷で遊んだ。
モヤイの前で待ち合わせ、カラオケかゲーセンに行き、飲みに行く。決まりきっていたが楽しく幸せだった。笑いあって一緒に過ごせる一分一秒が大切で仕方なかった。
けれど時間は過ぎる。
3月も終りに近付くと別れの予感がした。季節的なものなのか何なのかは今でも分からない。
私は桜を見たいと言った。彼は、いいよと優しく微笑んだ。彼もまた…
4月1日、上野公園に行った。花見客でゴッタ返していたが桜は美しく咲いていた。
二人とも口数が少なく手は繋がなかった。
お腹が減ったので私たちは渋谷にある居酒屋へ移動した。そこは二人のお気に入りで焼酎がおいしいお店だった。
二人でグラスをあげ「おつかれ」と笑った。しばらくいつもの他愛ない話をしていたがフッと会話が途切れた。
私が先か彼が先かは分からないけれど二人はもう…
「今日で終わりな気がする」私は言った。
彼は私を見つめ頭を撫でた。
「ごめんな。もっと早く出会ってれば」
いつも明るい彼の初めての後悔の言葉。私は悲しくなったが笑顔で答えた。
「それは違う。今この時、優と会えて良かったって思う。大人になる前の一瞬かもしれない時間を優と過ごせて嬉しかった。優にはいっぱいもらったよ。だからありがとう。」
笑顔を見せてはいたけど心は悲しかった。納得したはずのに怖くて泣き出しそうだった。
「俺もナナからいっぱいもらった。ナナの笑顔大好きだったよ。ありがとう」
気付くと彼の目は真っ赤だった。
「ちょっとトイレ。」
彼が席を立つのと同時に落ちた私の涙は気付かれないように拭いた。
店を出るともう夜の匂いだった。
私は彼と最後に触れ合った。二人でいる最後の時間、相変わらず彼は温かく彼の横はひどく安心した。
でも、これで終わり…胸が潰れそうなくらい苦しくて喉の奥がキュウッと熱くなった。
「2年、長いね」
「うん。」
やっと交した言葉。
「2年経ったら私22歳?」「じゃあ俺21?どうなってんだろ…」
たった2年なんで待てないの?という人がいた。けれど私たちにとって2年は果てしなく長く耐えられない時間に感じた。


君への最初へ 君へ 1 君へ 3 君への最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前