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離婚夫婦
【熟女/人妻 官能小説】

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縁側-1

 豊川は、娘の菜緒と1ヶ月に1度会う約束になっている。
 家族が離散してから6年近くになろうとしているが、この約束はずっと守られてきた。菜緒が中学生の頃は、第一次反抗期であったこともあって、会うこと自体まで反発され、かなり苦労したが、何とかここまで大きな綻びもなくきている。
 今日はその会う約束の日。菜緒の希望は映画鑑賞。
 豊川は映画鑑賞が苦手だ。あの暗い映画館の中に入ると、どうしても眠くなってしまうのだ。大きな音がしようとも、関係なく眠りに陥る。それだけならまだしも、イビキをかくものだから周囲の客にとっては迷惑千万。
 結婚前に望未と映画を観に行ったことがあったが、案の定早い段階で眠りにつき、大きなイビキを出してしまい望未に引っぱたかれたことがあった。
 以降、望未が一緒に映画に行こうと誘ってくることはなかった。
 そんな苦い経験があるから、菜緒から映画鑑賞を切り出された時ははたはた困ってしまった。その事実を直接伝えれば、一緒には行きたくないと言うだろう。
 せっかくの映画デートが水の泡になるのも忍びない。ここは何とか寝ないよう必死に頑張るしかない。
 
 当日。菜緒は午後からショッピングがしたいようで、早い時間帯のロードショーを希望してきたこともあり、早起きした分強烈な睡魔に何度も何度も襲われたけれど、何とか2時間近くの上映時間を乗り越えた。イビキをかくこともなかった・・・・・・はず。2,3度こっくりこっくりしたことは、目を瞑ってくれるだろう。
 昼食はイタリアンの店に入った。以前はハンバーガーショップや、ハンバーグなどのファミレスを好んでいたが、最近はイタリアンやフレンチなど洒落た店をリクエストしてくることが多くなった。
 高校生という年頃のせいか、少し大人ぶったジャンルを選びたくなってきたようだ。服装も、良く見る今時の女子高生の格好そのものになってきた。
 今回はカジュアルな感じのイタリアンにした。イタリアン系のファミレスを選ぶ手もあるが、年齢的にレディー扱いしなければならないと思い、この店を選んだ。
「パパ、よく頑張ったね」
 豊川は、何のことを言っているのか察しがついた。
「なんだ、知ってたのか。パパのイビキ」
「うん。ママから聞いたことがあったよ。絶対にパパとは映画に行っちゃだめって。イビキがすごくて恥ずかしい思いをするからって。小学校の頃、観に行きたいってママに言ったら、じゃあママと一緒に行こうって言われて、パパは!?って聞いたら、そういう風に言われたの」
 よっぽどあの日の映画館での一コマが、望未の心に忌まわしい記憶として刻み込まれているのだろう。
「今日も映画に行くんだって言ったら、気を付けなさいよって言われたよ」
 豊川は苦笑いするしかなかった。20年近く前の出来事を、今でも忌々しく思っているとは。それでも自分との一場面をまだ憶えてくれている嬉しさもあった。
 自分のことなど口に出したくもないんだろうなと思っていただけに、少し意外に感じた。
 菜緒と別れてから5年が過ぎ、小学生だった菜緒は高校生になっている。あどけなかった容姿は、一丁前にレディーっぽくなってきて、時折女を見せる瞬間もある。
 菜緒の成長は喜ばしいことだが、成長に伴う思春期特有の行動も心配の種の一つ。特に恋愛については、今の菜緒の現状を知らないので、気が気でない部分もある。
 彼氏がいるのかいないのか。知らないことに不安を覚えるが、もし知ったとして、彼氏がいたとしたならばそれはそれで苦悩だろう。
 そんなことを想いながら、ピザを頬張る菜緒の横顔を微笑ましく眺めていた。
「ねえパパ。お祖父ちゃんと会ってるんでしょ」
「ん!?良く知ってるな。お祖父ちゃんから聞いたのか?」
 義父との密会は、義母を含めた3人だけの秘密のはずであったが、義父又は義母の何らかの思惑があって菜緒の耳にいれたのだろう。
 約束事や内密にしなければならないことに対する、二人の義両親の口の堅さは尋常ではない。簡単に他人に漏らすことなど考えられない。孫だからといって、それが当て嵌まらないことなどない。
「うん。パパとは仲良くしているか?って聞かれて、多分ねって答えたら教えてくれたの」
「ふぅん。で、お祖父ちゃんは笑ってた?」
「うん。多分か・・・って言って笑ってた」
 紀夫の行動を目に浮かべると、恐らくは何らかの考えがあると思っていい。軽率に事を進めることはまずしない紀夫の性格からして、軽々しく言った言葉ではない。
「それでね、もし良かったら、今日お祖父ちゃんの家に来ないかって誘ってみろって」
 退院してからは、紀夫の体調を気遣って一度も会っていなかった。家に行けばいいのだろうけれど、望未と鉢合わせする危険性を考えると、なかなか難しかったし、何よりも離婚した嫁の実家の敷居を跨ぐことに躊躇いがあったのが一番の理由だ。
「うーん・・・・・・」
「大丈夫。ママは出張で北海道に行ってるから」
 返事を迷っている豊川を見て、その心を見透かした言葉を菜緒が言ってくれた。
「ママの教え子が地域のコンクールで入賞して、大きなコンクールに出ることになったの。それが北海道であるのね。先生として一緒に行くことになったんだって。だから、明日の夕方にならないと帰ってこないよ。今日は私もお祖父ちゃんの家に泊まるんだ」
 菜緒が嬉しそうに説明してくれた。
「多分お祖母ちゃんのことだから、ご馳走作って待ってるよ」
 紀夫の誘い、望未不在、トドメの菜緒の誘い、これらの条件が揃いながら断ることはしないと読んでいるはずだ。
 豊川も特に予定もないし、最大の懸念である望未との対面も、彼女の遠方への出張で払拭されたから断る理由も無い。
「わかった。一緒に行くよ」


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