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横浜発 7:54
【女性向け 官能小説】

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付き合う前、矢野さんは毎日同じ電車、というわけではなかった。
だから、出張なのかと思ったり
直行なのかと思ったり。

1週間、ずっと矢野さんをあの電車で見かけることなんかなかった。
でも、今週はずっと私と一緒だった。

そのために夜、無理をしているなんて思いもしなかった。

「矢野さんが好きなら・・・」
「・・・・」
「もっと矢野さんを大事にしてください!」

それだけ言うと、私の返事を待たずに2人は座敷に帰って行った。

言われていることはもっともで
そんなに無理をさせてしまっていたなんて。

息を詰めていたようで、大きく息を吐きだして
肩で呼吸をした。

たった2分の楽しい時間が
実は無理をして作り出されていた時間だったなんて。

座敷に帰った私を見て
「どうかした?」
そっと聞かれたけど私は何も言えなくて。

「ごめん、少し体調がよくないみたい。そろそろ帰るね」
そういって一人でお店を出ようとしたのに
矢野さんも立ち上がる。

「送ってく」
「え。いいよ。まだ皆さんと飲んでて」

そういった私にやさしく笑いかけて
「体調悪いのに一人でなんか帰さないよ」
と、お店の前からタクシーを拾って自分も乗り込んだ。

きっと私の何倍も疲れているだろうに。


私は翌日、いつもの7:54の電車に乗らなかった―――




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