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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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ホントノキモチ-1

セミ達が合唱をするかの如く周りで鳴り続け止むことはなく少々うっとおしい。

喪服をまとい見渡す限り墓石だらけ、お盆と言うだけあって家族連れも多く、ただその
表情は何処か軽々しい、まぁ私と父が特殊なだけだ…。

「にしてもあの子は若葉は来ないのね。」
「本当は来る筈じゃったのだが知り合いの子と庭園へ向かうようじゃ。」
「庭園、ガーデンパークね、それに知り合いの子ってあの茶髪の…。」
「あーあのボサボサ頭の、って風馬君じゃったな。」
「大丈夫?もう認知症始まった?」
「たわけっ!この家出娘、いやもうおばさんが、この不良婦人め!わしゃまだまだ現役
じゃけ、ごほっごほっうぅーごほっ。」
「分かりやすー、色々言ってる意味が分からない。」

北海道へ父と娘に会いに行くまでは自分の中で二人を勝手に大きな存在にしたてあげて
いたけれど、実際会ってみるとそうでもない。

「あの子、今頃風馬君とデートなのかしらね?」
「けしからんっ!先祖の霊に感謝する事なく、いちゃいちゃしよって!」
「それが今の子ってものさ、それに若葉だって本当はお墓参りに行きたかったんでしょうけど、それでも風馬君とのデートを優先した。」
「けしからんっ!前はそんなたわけた子じゃなかったのに、まさか風馬君がきゃつの仕業なのかっ!?」
「お父さん…無理して古い言葉を使わなくて良いよ、なーに?「娘は渡さん」的な?」
「そりゃーそうだろうさ、どこぞの馬鹿母がイライラしてあの子を置いて家を出るから、
不便で可哀想で。」
「して無理に頑張り過ぎて逆に優しいあの子を心配させて。」
「あれは、そう祟りじゃっ!」
「そんなんじゃ娘が可哀想。」
「せからしかっ!お前に言われたかないわいっ!」

せからしか…、ここ北海道よね?

「…そうだよね、ぐすん。」
「ウソ泣きすなっ!若葉はともかくお前じゃ気持ち悪いわ。」
「んもぅーさっきから酷い言われようね?実の娘に向かって。」
「お前なんぞ、娘じゃー…んぅ。」
「これでもあの子が小さい頃は「美人姉妹」何て言われてたのよ。」
「元…な、今は若葉だけが可愛くて仕方がない。」
「でもそんなあの子も彼に盗られるんでしょうね。」
「んぅー、風馬君かぁー、お前はどう思う?」

あの子にとって彼とのデートはただのデートではない、だから態々このお盆の予定を天秤にかけても…。

「まぁー良い子と言えば良い子よね、ちょっと頼りないけど優しくて愛らしくて。」
「ワシが倒れた時もずっと若葉に付き添ってくれたそうじゃが。」
「ならやっぱ良い子じゃん。」
「むぅ…。」

それ以降何を言うでもなく、そして目的地へ辿り着き。

「……。」

墓石には見覚えのある二人の名前が。

「貴方、お母さん…。」

先程までの楽しい空気が一変し、胸が締め付けられる。

「ショックか?気づけばこの世の人ではなくなっていて。」
「えぇ。」

けどそれ以上に私は彼らに申し訳ない気分だ、一体どんな思いで死んで逝ったのだろう?
家族を蔑ろにした罪悪感がここでずっしりとくる。

「…もっと、もっと話したかった、私が出て行って娘のしつけや家事を全て押し付けた事
を謝り、お母さんのとも…。」
「生き残ったのは後ワシと若葉だけか。」

サバイバルゲームか…。

「お前、本当にアイツと一緒に暮らすのか?」
「それは…。」
「若葉をあまり困らせるものではないぞ。」
「でも、でもっ!」

複雑な思いを抱き、二人の眠る墓石に水を掛ける。

少しでも罪悪感を減らす思いで…。


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