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横浜発 7:54
【女性向け 官能小説】

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「お疲れ様です」

すれ違う数秒前に発したその声に、腕時計から視線を外した彼が
一瞬私を凝視した。

本当に瞬きぐらいの一瞬の凝視の後。

「お疲れ」

そう言って、私の肩にポンと手のひらを置いた。

そのまま立ち止まることなく、彼はまっすぐと自分の向かうべき場所へ
長い脚で歩き去った。

「何?知り合い?だれ?だれ?」

その様子をぽかんと見ていた同僚が騒ぎだす。

「え?え?会社関係の人・・・じゃ、なかったっけ?」

会社はそこそこの規模で得意先の出入りも激しい。
もうすぐ入社半年の私は全員の顔と名前なんか一致させることは不可能で。

「え?違うでしょ。あんないい男1度見たら忘れないんだけど!」

同僚は顔がイイ男への記憶力は別枠らしい。
会社の人じゃ、ない?

げ。私、誰に挨拶したんだ?
でも確実に見覚えあるんだけど。

会社の人でもない。
取引先の人でもない・・・

でも確実に初対面じゃない。

学生時代の知り合いにあんなにカッコいい人はいないし・・・

あの人は、誰?

その答えは翌朝解決した。

ああ・・・
そうだ。

知り合いでも何でもなかった。
毎朝、同じ電車の同じ車両に乗る人ってだけだった・・・

そうだ。イケメンだから私が勝手に覚えていただけだ!

その事実に愕然として。
そっとドアを1つずらそうとしたところで
肩をぽんと叩かれた。

「おはよう」

その男は爽やかに笑っていた。



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