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アダルトビデオの向こう側
【熟女/人妻 官能小説】

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5.事件-3

「香代さんのこのナスのしぎ焼き、あたい大好物なんだ」
 リカがぽつりと言った。
「そう? 夏からけっこうナスばっかり使ってるから飽きたんじゃない?」
「そんなことない。あたいここで香代さんに作ってもらうまで、こんなナス料理知らなかったもん。旬が終わる前に教えて。作り方」
「もちろん。いいわよ」

 リカは壁の黒い文字盤の時計を見上げた。
「そろそろ拓也の来る時刻じゃない?」
「ほんとだわ」
 香代はひどく嬉しそうな顔をした。
「幸せそうな顔して……」
 リカは呆れたように眉尻を下げて、茶碗蒸しの器に蓋をした。
「ごちそうさま。とってもおいしかった」

「そう言えば、黒田が言ってた」
「え? 何て?」
「カヨコシリーズは他の作品の二倍売れてるって」
「そうなの……」
 食べ終えた皿に口元を拭ったティッシュを丸めて置いて、香代は湯飲みのお茶をすすった。
「拓也のカメラワークもすっごく評判でさ、うちの事務所の女優が出演する作品のカメラマンの中ではダントツじゃないかな。彼が回す作品は、それだけで2割ぐらい売り上げが多いって。でもエッチなDVD買う人が姫野拓也っていうカメラマンまでチェックして選んでるなんて、すごくない?」
「あの人には才能があるのよ。私、ずっとそう思ってた。辛いことも多かったはずなのに。すごい人よね、あの人」
 香代は独り言のように言った。
「以前から認められたカメラマンだったけど、『カヨコシリーズ』を撮り始めてから、その腕にますます磨きがかかったようだ、ってどっかの雑誌にフリーライターが書いてたの、読んだことあるよ」
「ほんとに?」
「しばらくは黒田も『クリえろ』も手放さないよあんたも拓也も。売れてる間は酷使されるかもよ」
 香代は困った顔をした。

「でも、そんなあんたが返した借金が三年で150万なんてあり得ないよ。林にごまかされてるんじゃないの? ほんとに」
「心配してくれてありがとう。だけど私もタンスにけっこう貯めてるのよ」
「知ってる。でも空き巣泥棒が来たらパーだよ?」
「私の部屋、質素だし、引き出しの中じゃなくて、タンスの底に隠してるから大丈夫よ」
「いくらぐらい貯まってるの?」
「もうすぐ100万ぐらいにはなるかな」
 リカは眉をひそめた。
「あんまり人に話さない方がいいんじゃない? そんなこと」
「早く借金を返して息子に会いたいもの」
 香代は肩をすくめてふふ、と笑い、食器を持ってソファから立ち上がった。リカはその後ろ姿を目で追って小さなため息をついた。




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