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ヒューマン・ロール・プレイ
【調教 官能小説】

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〜 特訓終了 〜-1

〜 2番の特訓 ・ 終幕 〜


 
 『技術』『家庭科』『情報』『音楽』『美術』『書道』エトセトラ……実技分野に絞って過年度の経験を伝えてくださった『特訓』の時間も、この『美術』をもって幕を下ろします。 ひょんなことをきっかけに始まった3人の先輩方による私と22番さんの『特訓』は、想像していた以上にたくさんの知識を与えてくれました。 そして、知識より遥かに大切かもしれないことを教えてくれました。 学園で生きる心構え――実技に望む覚悟――がそうです。 学園の一員として一年間を過ごした先輩方の歩みは、それそのものが私達が目指す道です。 淡々と語ってくれた過酷な指導の数々に耐えた先輩の言葉だからこそ、理不尽極まる内容であっても、徒に反抗することなく聞き入れることが出来ました。

 特訓を通じて何度も感じたことがあります。

 世界は間違っているし、この学園も狂っているし、私たちに碌な未来なんて待ってないです。 過去に、少女時代に夢想した幸せな生活が、私たちに訪れることなんて万に一つ、いいえ、億に一つもありません。 それでも、少なくとも私の目の前にいる先輩方は、とっても暖かい先輩でした。 普段から優しいとか、カッコいいとか、そういうんじゃありません。 言葉は冷たいし、そっけないし、甘えを許してくれそうな雰囲気なんて皆無です。 でも、自分達の貴重な時間を割いて、こんなに恥ずかしく重苦しい記憶を呼び覚まし、面倒くさがらずに私達の相手をしてくれました。 痴態をともなう演奏、自分の陰部にスポットを当てた作品、尊厳を無視される演習の数々。 好きで再現するものなんかじゃありません。 それなのに、先輩方は、自分のオマンコを真正面から見せてくれました。 私達みたいな、学園で最下層のCグループ生に、ですよ。 厳然たる事実です。

 美術の特訓後、部屋の片づけを終え、私と22番さんは、直立して御礼をいいました。 先輩方から受け取った経験は、お金には代えられない貴重なものです。 まして言葉で贖えるものじゃありません。 頭を下げながら、内心では『何か見返りを求められるんだろうな、きっと、すごく難しいことや恥ずかしいことを、御礼代わりにさせられるんだろうな』って思ってました。 けれども【B29番】先輩は、

「気にしなくていいよ。 ただし『にに』にも、二人でちゃんとお礼をいっておきなさい」

 と、笑うだけです。 【B2番】先輩に至っては、

「大変でしょうけど〜頑張っていれば、きっといいこともありますよ〜♪」

 こちらを励ますだけで、自分達の苦労を恩着せがましくする真逆です。 つまり、私の心配は杞憂に過ぎませんでした。 

 何も求められない、何も指示されない、なんにも見返りを期待されない。

 ……変な話ですけど、逆に不安が募ってきちゃって……。 昔から『タダほど怖いものはない』って言い聞かされて育ったからと思います。 私自身、どちらかというと損得で物事を考える方ですし、打算も欲得も全肯定してここまで来ました。 無償で何かしたことも、そりゃあ、ちょっぴり募金したことくらいはありますけど、基本的には記憶にないし……。 

 そんな私と比べて、22番さんは先輩方の言葉を素直に受け止めたようでした。 感謝の気持ちが紅潮した表情から見て取れました。

「本当にありがとうございました。 あの、何が出来るかっていわれると困るんですけど、きっと先輩方のお役に立ちますから、何でも言いつけてください」

「畏まるねぇ。 そういうのはいざという時にとっときなって」

「……わかりました。 御礼は何も出来ませんけど、きっと、クラスのみんなのお手本になります。 クラスの委員長を立派に勤めてみせます」

 しっかりした口調で告げる22番さん。 

「それが一番です〜♪ 大変でしょうけど〜。 あたし達も〜先輩に色々教えてもらいましたからね〜。 こういうの〜情けは人のためならずっていいますし〜」

 自分の作品を丁寧に箱に詰めている【B2番】先輩が、振り返りざま、のんびりした口調でいいました。 

「2番ちゃんも〜しっかり頑張ってくださいね〜」

「わ、私も、先輩たちのように、頑張っていい成績を取ります!」

 22番さんが、スラスラとカッコいいことを言っちゃったから、自分も何か言わなくちゃ、かぶらないことを言わなくちゃと思うあまり、つい本音が出てしまいました。 うわ、22番さんと比べたら、私ってば、ただの自己中心的でヤな後輩じゃないですか……。



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