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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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稲葉明日香-3

「何よ、話って…。」

そのまた翌日、私は意を決して学校裏に今回の騒動の首謀者を呼び出す。

「……。」

稲葉さん…、目つきは尖り、短めの髪もボサボサに伸び、不良そのもの、嘗て私の家に
来て、風馬君に好意を抱き巴ちゃんと3人で相談し水族館へデートに行ったり、彼が例の
罪で男子達に責められそれを健気に助けた純粋で優しい彼女の面影は何処にもない。

同学年だけど私を年上のように謙虚だった姿勢は無く、私大して親の仇でも見るような目で睨み付ける、正直怖い…でも私は一人で来た訳じゃない。

「ったく、次から次へと悪党が…。」
「全くだよ。」

私の後ろからやってきたのは巴ちゃんと一条君、ただ動きが芳しくない。

「お前ら…何で。」

巴ちゃんは松葉杖を、一条君はおでこに包帯が巻かれ。

「あの夜はよくも可愛がってくれたわね…。」
「弟まで巻き込んで。」

どうやら彼が逮捕された夜、帰宅途中の巴ちゃんが見知らぬガラの悪い少年3人組に襲われ、一条君も弟と買い物帰りに奇襲を受けたようで。

巴ちゃん達が襲われている最中に会話の中から稲葉さんの名前が出て来たらしく、察する
に稲葉さんはその不良共と付き合っていて、密かに好意を寄せられている事からその3人
に頼んだらしく。

「どうして、どうしてこの二人まで。」
「……。」

私はか細い口調で問いかける、しかし答えてくれる様子はなく代わりに巴ちゃんがその
答えを口にする。

「若葉を傷つけたいんでしょ?より一層に。」
「えっ…。」
「彼の逮捕当日も柊さんはとても苦しんだ、けどそんな彼女を護る僕らがうっとおしかった…。」
「だから私たちを襲わせ、彼女にそんな味方さえも失わせ孤独にした。」
「しかも若葉は優しくて心配性、こんなボロボロの私達を見て更に心を傷つけられると思った…。」

酷い、酷すぎる…。それ以前に彼女はそこまでして私の事を憎んで。

「一体どうしてこんな真似を?風馬君への恋心に背中を押してあげたのに。」
「その恋心を肝心な所で踏みにじったのは誰よっ!」

他でもない私、だけど。

「…アンタはあの佐伯君って人と付き合ってたんでしょ?」
「えぇ、ずっと前までは。」

色々あって私は風馬君と付き合う事になり。

「一緒に映画にも行ってどうやったら彼に振り向いてもらえるか必死に考えていた、そうすればいずれか風馬君は私に振り向いてくれるだろう、そうやっていつも希望を抱き色んな事をしてきた…それをアンタがっ!」
「稲葉…さん。」

私は佐伯君と付き合い、自分は風馬君をモノにする、その筈なのに私によってあり得ない
事をされ、裏切られ希望を努力を踏みにじり。

風馬君を突き出し、二人に危害を加え、最初は強い憎しみと警戒心を抱いていたけれど
薄々それは自分のせいだと、そして彼女に対して激しい罪悪感を覚え。

「何で小鳥遊君を警察に突き出したのよ。」
「そうだよ、柊さんはともかく彼は君にとって。」
「アンタ達はニュースって見る?そこで交際を断られ殺害って事件を見かけるでしょ?
そういう事。」

私にばかり思いを寄せ、挙句両想いとなり自分に何かもう振り向いてもくれないと思い
目障りで腹立たしいから警察に連行させた、かなり身勝手ではあるが、それに私を傷つけ
る事も出来て。

警察にも他に「私が強姦を受けた」だの「性的暴行を受けた」だの大袈裟にデタラメを
言ったらしく。

ただそれもこれも元はといえば私が急に佐伯君から風馬君に乗り換えたから、周りの事に
もっと注意を配って入れば。佐伯君と別れるのがお互いにとって賢明、風馬君と付き合い
幸せ絶頂のさなか、彼女は苦しんでたんだ。

「若葉?」
「……。」

私は彼女の前で地面に両手を突き、土下座して深々と謝った。

「稲葉さん、本当に御免なさい。」
「……。」
「貴女が風馬君の事好きだって事は知ってたのに、そう思って水族館へデートさせ背中を
押して期待を持ち上げておいて。」
「…あれは彼がアンタに好意を寄せていて、その時は佐伯君と付き合っていたから思いを寄せられても困るから私をくっつけようとした、つまり親切心でも何でもないただ私を
利用しただけ!」
「人聞きが悪いな、利害の一致と。」
「うるさいっ!面白可笑しく尾行して楽しそうにっ!」
「うっ!」
「…で?そうやってくっつけてようとしたら今度は行き成り手の平返して私の想いも忘れ
やっぱり風馬君と付き合いだして。」
「……。」
「分かる?この悔しさ…、良いように利用され、持ち上げておいて、自分の勝手な都合で
人の希望奪って。」

彼女の気持ちは痛い程分かる、最早返す言葉もない、最初はやり過ぎと思っていたけれど
今想えばこれは当然の報いかも。

「本当に御免なさいっ!私は貴方に酷い事したっ!謝っても許されないだろうけど。」
「そうよ、今更謝って気づいても手遅れよ。」
「じゃーどうしたら若葉を許してくれるのよ?」
「彼と別れてよ。」
「それは…。」
「っ!出来ないんでしょ!?なら謝んなよ、自覚があろうがなかろうがもうどうでも良いのよっ!」

怒りが収まらない彼女。

「悪いけど私はアンタ何か許さないから、風馬君も刑務所に入れるように訴えるしこの
二人も今度は病院送りにしてやるからっ!」

そんな……。


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