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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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稲葉明日香-2

「風馬君っ!!」
「あ、若葉ちゃん?」

警察署から出て来た彼を見かけ、一目散に駆け寄る。

ここに居ると何だか気分も悪いし、私達は人気の無い公園へ移動する。

逮捕された後、警察から案の定取り調べを受けていた、それも一時間以上も…。「同級生を刺したのは本当か?」「同じ女子生徒に半年以上も付きまとってたのか?」と、更には
「盗みも行ったのか?」「女子生徒の家に不法侵入もしたらしいな…」と、あまりにも
検討違いな詰問もし出して。風馬君は突然の出来事に多少はうろたえてはいたものの冷静
に嘗て私に付きまとった事、そして佐伯君を刺してしまった事と事実だけを述べ、そんな
根も葉もない別の罪はきっぱり否定した。

今の警察はバカじゃない、風馬君も誠心誠意きっちり話したお陰か取りあえずは釈放され
でもまだ油断は出来ない。

「殺人未遂で少年院に入るのかも。」
「え…。」

血の気が一気にひいた、彼が刑務所に?

「…彼を、いや人を刺したのは事実だもんなぁー。」
「風馬君…。」

ここにきて一気に弱気になる彼、確かに佐伯君を刺したのは言い訳のしようもない事実で
警察に逮捕されても可笑しくはない、けど。嘗てその事件が起きた日、巴ちゃん一条君
それに被害者の佐伯君も今と同じ状況にしようとしてた、でもそれを私は止めた。

刺した事は決して許される事ではないが、そうなる経緯を思えば、今の犯罪だって闇雲に
犯罪者を重い罪で裁く訳じゃないし、それと同じ。

「ごめん若葉ちゃん。」
「え、どうして君が謝るの?」
「僕のせいで君にこんな心配をかけてしまった。」

確かにあの朝は酷かった、何故だかその日は私を庇ってくれる巴ちゃん達が欠席で、味方
は誰一人居ず、孤独で苦しかった。

「ちゃんとあの子と君との交際をしっかり伝えていればこんな事には。」
「それは…。」
「僕たち、別れた方が…。」
「何言ってるのよっ!」
「だって、このままじゃ君まで。」
「そんなの別に良いよ、折角付き合い出して、この前の青森で皆丸く収まってのに。」
「でも…。」

私の身を案じてくれているんだろう、私は彼を包み込むように抱きしめ。

「大丈夫だよ、私が…君を守ってあげる、だから心配しないで…。」
「若葉、ちゃん。」

そうだ、こんな所でくじけちゃ駄目だ。

今度は私が、彼を救う番だっ!


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