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「あなたに毒林檎」
【SM 官能小説】

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「あなたに毒林檎」-2

ずーとこのままいたいなって思った時、彼のもって来た荷物に目が行ってしまった……。大きな茶封筒の中から真っ赤な林檎が顔を覗かせていたのだった。
彼の持って来た林檎がそうであるはずは無いのだが妙な胸騒ぎを覚え彼を誘いバスルームへ向かった。

 互いに着ている物を脱がせあう。
彼のボクサーパンツに手をかけるといやーんてオカマさんみたいに身をよじって私を笑わせたが、
私も負けずに履いているショーツを脱がされる時やーんて身をよじって彼を笑わせた。

 彼にシャワーヘッドを持ってもらい頭を洗う。
いつものことだが彼はシャンプーまみれの私の頭ではなく他の部分を綺麗綺麗にしましょーとか言いながらお湯を浴びせている。バカーとか私に可愛い声を上げさせるのが大好きなのだ。まだまだ付き合って短い彼だったが今までのどの相手より相性が良くとても好きになっている私が居た。
 あまりに悪ふざけが過ぎるときは彼の息子さんをピンって指で弾いたりするのだけど今日はそのまま優しく握り締め硬くなって行くのを手の中で楽しむ事にした……。彼は私の髪にお湯をかけてくれ甘い香りのする泡を流すと再びキスの雨を降らしてきた。手の中でぐんぐん硬くなるおちんちん……。
私は彼のキスに心を蕩けさせられながら身体を次第に開いて行く……。

いつもの倍以上興奮している私が居た……。

 今日やってしまったお馬鹿な事件や寝起きの寂しさをまぎらわそうとしているんだろうと自己診断したが、彼にセックスの楽しさを導かれたのも手伝い愛しい人に全てを曝け出し、彼の要求に応え私も彼を求めた。

 彼は私の耳元でどうしたの? 今日は凄いよと囁くとそのまま嬉しそうに耳たぶをかじりだした。
真っ赤な毒林檎は果たして食べてはいけないものなのだろうか?
セックスの快楽は人が子孫を残すための神様が与えたもう一つのご褒美だと思えてきた。
きっとそうだろうな、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいいを私は繰り返した。
彼も私の目を見ながら俺も、俺も、俺もだと繰り返し、バスルームの中のふたりは
流れ去る熱いシャワーでお互いの体内から溢れる液を流し合った。

 バスタオルを身体に巻き部屋に戻る私。
彼は先に出ていて冷蔵庫からポカリを取り出すと腰に手を当てグイグイ飲んでいる。
私はもう一つのタオルを取り出し、くるりと髪にも巻きつけ飲み干しそうなポカリを私にもちょうだいと彼の手から飲ませて貰った。至福の時、ただただ幸せな時間。

 台所のテーブルに座り紙袋から林檎を転がし取り出す彼。

「今日の引越しの礼に貰ったんだけど、今日はまずい物持ってきちまったかな?」
彼は私のブルーの原因を気にしてくれている。

「いいのよ気にしないで」

「あの果物屋のじーさまには参ったけど、あなたがもし私に薦めてくれていたのなら食べれたかもしれない」

 いっときの沈黙の後、彼は私にうやうやしく向き直ると真剣な眼差しで貰ってきた林檎を差し出す。

「これは毒林檎です。ですが本当の毒ではありません、死んだりはしません、あなたを惑わす不埒な林檎……食べますか?」
私も彼の目を見ながら冗談だと知りつつ雰囲気に飲まれてしまったのか、お遊び以上の感覚で答えを言った。

「はい、ご主人様……」
 その思いも付かない言葉を放った私の中に不思議に昂揚する思いが広がっていった……。
…おかしいな…まだエッチしたいのかな?

 私は彼の眼差しから目を逸らし窓の方に目をやった。
窓の外は虫の音が賑やかに奏でられあたりは夜の匂いでいっぱいになっていた。
虫の音は私のドキドキする心臓の音に呼応しているみたいだった……。


 それがまさか私の凄まじい経験の複線になっているとは思いも寄らなかった……。
まるで作り話だ。……御伽噺だ。……SFだ。
でも、現実はトイレの中にあってそれは手と足が生え目玉も飛び出しギョロギョロと
こちらを見ている訳ではなく、ただ私がそれをじーっと見つめているのだ……。

 数日前にとある果物屋の店先で起こった「毒林檎」事件……。
ただのいかれじーさまの戯言だと思っていた……。
だがあの時私は確かにあの「毒林檎」を齧ったのだ……。
胃にも実は通っていたのだ……。
ほんの僅かではあったが通ってしまっていたのだ。
怖い、怖い、怖い、恐ろしい、恐ろしい、恐ろしい……。
この世の終わりだ。
もうパニックだった。


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