若い男-8
和真との情事を終えて数時間が経過したのに、まだ身体の火照りが収まらないような気がしていた。身体も頭も、もやもやと性欲の残塊があるかのように・・・
和真のペニスを思い出すと、ダラダラと淫らな蜜汁が滴り落ちるような気がする。
そんな淫想をしながらも、仕事であるピアノのレッスンのことも気になっていた。
（あーダメダメ。ピアノに集中しなくちゃ）
来週からは、新たに中級クラスの受講希望者のレッスンが始まる。ぶっつけでもある程度はこなせる自信はあるが、最近弾いていない楽曲が多く、少し慣らしておきたかった。
しかし、電子ピアノの前に座ってはみたものの、昼間の行為を思い出し、いやらしい妄想を巡らせている状況ではピアノなど弾けるわけが無かった。
（今日はゆっくりとお風呂に入って寝ましょうか・・・）
集中出来ずに続けるならば、割り切って今日の所は弾かない方がいい。
今日のような情事が原因以外でも、その日の気分によってノリが悪い日もある。そんな時に無理に弾いても、かえって調子を崩す場合が多い。ピアノを演奏するということは、意外と繊細なのだ。
スポーツなどでは、よくメンタルがプレーを左右すると言っているが、ピアノだってそうだ。気持ちのブレで、散々な演奏になることなんて珍しいことではない。
更に一度歯車が狂うと、建て直すのも一苦労。だったら、無理に弾くことは無い。ピアニスト全員がそう考えている訳じゃないだろうけど、望未はキッチリとメリハリをつけないとダメなタイプだった。
（じゃ、さっさとお風呂の準備でもしますか）
夫が不在になってからは、風呂を沸かす回数が極端に減った。自分も菜緒もシャワーで済ますことがほとんど。
今日もホテルでシャワーを浴びているから、夜もシャワーで十分だろう。けれど、心地良いこの心と身体でゆったりとお湯に浸かるのも悪くない。
お湯はりのボタンを押し、湯を張る準備をすると、普段はそんなに口にしないアルコールを冷蔵庫から取り出した。
精神的ほろ酔いに拍車をかけ、身体的にも軽い酩酊状態でゆっくりと浸かろうと思った。
酒は全く飲めなくはないが、それほど強いというわけではない。飲み会などの席でも、サワー系やカクテル系の少し甘目のドリンクを２、３杯といった感じ。アルコールを楽しむと言うよりは、その場の雰囲気を楽しむためのアイテムとしての飲酒。
取り出したカクテル風のチューハイ一本で十分ほろ酔い気分になれる。
♪〜〜
沸き上がり完了を告げるメロディが鳴った。
残ったチューハイを飲み干し椅子を立つと、ふわりと宙に浮くような感覚に襲われた。思った通り、身体は軽い火照りを覚え、ボワーンと心地良い感覚に包まれている。
脱衣室に入り、服を脱ぐ。洗面台の鏡に映った下着姿の自分。
（このカラダを抱いてくれた・・・）
鏡越しにあらためて自分の身体を眺めてみる。太くは無いが、痩せてもいない。腹の部分はやはり弛みが見え隠れしている。全身の肌を擦ってみる。
（やっぱり潤いはないなぁ〜）
それでもこのカラダを舐め回し、喜んでいた和真が愛おしく感じた。
再び和真との情事が頭の中を逡巡する。
自分の身体を抱きしめるように腕を胸の前でクロスさせ、和真の残り香を探すように左肩の先端当たりの匂いを嗅いでみる。嗅ぎ慣れないラブホテルのボディーソープの匂いしかしなかった。
夫がいないのに匂いに気を遣った。もしかしたら、いつもの自分の匂いとは違うことに菜緒が勘付くのではないかと、勘繰っていた。
必要以上に、過敏すぎるとも言える行動は、やはり不倫の後ろめたさなのであろう。
自分の中では、バレるはずが無いと思っていても、心のどこかで『何処かで誰かに見られているかも・・・』と言う猜疑心が拭えない。
首筋からシャワーを当てると、ピチピチと滴が弾ける。一瞬『まだまだお肌イケる』と勘違いしてしまう。が、しかし、ただ単に掛け始めの勢いでしか無いことを数秒後に自覚する。
ゆっくりと身体全体をシャワーで流す。
何だか和真の温もりまで流れ落ちそうで、名残惜しく感じた。
いつものボディーソープを手に取り、スポンジで泡立て、鎖骨から順に全身を洗う。和真に舐め回された胸を下から持ち上げるように洗うと、スポンジの端が乳首に触れた。
ビクンと体が反応した。
先程まで、昼間のいやらしい行為を思い出していたのだから、カラダもエッチモードになっていたのかもしれない。
（やん、また、また、いやらしいカラダになっちゃうのぁ）
シャワーヘッドの方に胸を向け、シャワーの流水が乳首にダイレクトに当てる。
「あああああっ」
甲高い声が、バスルームに響き渡る。反響効果で、喘ぎ声にエコーがかかった感じに聞こえる。その声は、部屋での声より何倍もいやらしさを助長する。
居ても立っても居られなくなった望未は、シャワーを手に取り、股間に水流を当てる。
「はぁぁぁぁぁーーっ、あぁぁん」
余った片方の手を、自らのオマンコにあてがう。
そこはヌルヌルとスケベな汁で溢れてた。おそらくピアノの前に座った時には、既に濡れ始めていたに違いない。
今では、すぐにでも指を挿入出来るくらいに濡れそぼっていた。
シャワーでクリトリスを刺激し、指は膣口の辺りを撫で回す。
「あはぁぁん」
我慢出来ずに、指を1本挿入すると、吐息が漏れた。
ザーザーというシャワーの音に掻き消されているが、間違いなくそこはくちょくちょと卑猥な音を出しているはずだ。
片足を湯船に乗せ、思いっきり花弁を開いた。そして、今までの自慰行為ではほとんどしたことの無い２本指の挿入を試みた。
ズブッっと、いとも簡単に飲み込まれていく。その姿が鏡に映る。
いやらしいメスが、高々と脚を上げ、オマンコに指を突っ込んでいる姿が目に入った。
私はこんなにもいやらしかったのか・・・