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離婚夫婦
【熟女/人妻 官能小説】

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若い男-7

 和真に抱かれた身体の火照りが冷めぬまま、望未は自宅マンションに帰宅した。
 現在住んでいる賃貸マンションは、駅から徒歩7〜8分程度の距離にある。夫の会社まで電車で2駅。徒歩を含めても45分程度で通勤には便利である。
望未が講師を務めているピアノ教室へも電車で3駅、約30分で通えるので便利な立地だ。夫の会社からの家賃補助もあって、住居に関しては何の文句も無い。

「ただいまー」
「お帰り。今日はいつもより遅かったね」
 時計は18時をずいぶんと回ってしまっていた。普段ストレッチ教室に通っている日は、遅くとも15時には帰宅していて、水泳教室から菜緒が帰ってくる18時には夕飯の支度も終わっていることが多い。
「ごめんねー。教室のおばさんたちにつかまっちゃって、ランチ一緒に行った後、買い物まで付き合わされちゃってね。そのお詫びという訳じゃあないけど、じゃーん菜緒の好きなCARAのケーキ買ってきたよ」
「わーい、やったね」
 小学5年になった菜緒。多感な時期に入ってきているだけに、まさか気付かれたんじゃないかと内心ドキっとした。
 よくよく考えてみれば、気付かれる可能性などあるわけないのに、何故かドギマギしてしまう犯罪者の気分とでも言えばよいのか。後ろめたさがあると、日常会話でもこのように気になってしまうのだろうか。
「ちゃっちゃと夕飯作っちゃうからもうちょっと待っててね」

 手早く作ったパスタとサラダを並べてシンプルな夕飯。
 夫がいれば、晩酌の肴を考えなければならない所だが、女二人であれば量もそれほど必要ないから、夕飯を作る負担はさほどでもない。
「ねえママ、今週はパパ帰って来るんでしょ」
 デザートにお待ちかねのCARAのストロベリーミルフィーユを頬張りながら菜緒が聞いてきた。
以前はほぼ毎週単身赴任先から帰ってきていたものだが、最近は多忙の様で、2週に一度、ひどいと月に一度の帰宅となることもあった。片道電車で2時間以上の距離だから、面倒と言われても仕方がない。
 単身先で女でも出来たのかと思うこともあるが、夫の業界が好況で、どの会社も忙しいというのはまんざら嘘でもないらしい。それに、もし女が出来たら出来たでこの冷え切った夫婦関係がどう転ぶのだろうなんて考える気も無かった。
 別に、何が何でも帰ってきて欲しいと思うこともないし、帰って来たからと言って嬉しいという気持ちもほとんどない。
 但し、菜緒の学校行事や相談ごと。特に、電話で話すだけでは事足りない内容の場合には、帰って来てもらわないと困る。都合がいいと言われればそれまでだが。
 来年小学6年生になる菜緒。来週には保護者面談が予定されている。
 自分たちの同じ時期の保護者面談は、学業はどうか、悩みは無いかなど生活面における相談ごとが主な内容だったと母から聞いたことがある。しかし最近は、進学についての方向性など、自分たちの頃とは比べようもないスピードで前倒しされていると友人から聞いた。
 この地域は、ベッドタウンに属すると言ってもいい。ベッドタウンにしては少し主要都市から離れてはいるが、近隣にはマンションやアパートが点在し、その多くが主要都市に通勤している会社員だろう。朝の通勤風景を見ると、そう思える。
 小学校のママ友からの情報だと、同級生の中には何人か都内の私立中学校を受験する子がいるようだ。親としては地元の中学校に普通に進学することが当然だと思っていたし、私立受験なんて考えてもみなかった。
 ただ、そんな話を聞くと、菜緒も地元中学以外の選択肢を考えた方が良いのだろうかと焦りにもにた感情が出てきてしまう。
 案内のプリントでも、中学進学について話をすると記載されていた。面談の前に、夫ともその辺のことを話をしておきたかった。
「そうね、お仕事が忙しいみたいだけど、必ず帰ると言っていたから」
 望未としては、自分の夢だったピアニストを目指して欲しいと思っていたけれど、小学校高学年の時点で、菜緒にはその才能が無いことを悟ってしまった。努力で何とかなるといったレベルでは無い。よくて、学校の音楽教師が関の山。その程度の才能だと感じていた。
 片や菜緒は、自分の描く音楽の道よりも、スポーツの道の方が合っているようだ。元野球部で県大会ベスト4に進んだこともあると話していた夫の血筋を引いたのか、陸上のマラソンにそれなりの才があるらしい。
 まだ小学5年生。この先どう心境の変化があるかもわからないし、別の才能を見出すことが出来るかもしれない。本人も、通っているスイミングを続けていきたいという医師もあるようだし、これから伸び盛りを迎える小学校高学年から進学どうこうということを決めていかなければならないなんてと思うけれど、これが今の子供事情と言われれば仕方がない。

 食器の洗い物と洗濯が終わったのはもう10時近かった。菜緒は毎日の練習で疲れているのか、宿題、入浴をさっさと済ますと、9時過ぎには床についてしまう。
 それを見届け、家事を終わらせればあとは望未の自由時間になる。大概は、ピアノの練習。と言っても、マンションという集合住宅なため、実際にピアノを弾くことは難しい。昼間の時間帯であれば、近隣の迷惑も最小限で済むかもしれないが、近所付合いを考えれば自ずと自粛するしかない。そのため、このマンションに引っ越してくるタイミングでピアノは実家に運んでしまった。
 今は、電子ピアノにヘッドフォンを付けて練習している。以前は鍵盤のタッチがグランドピアノとかけ離れていたようなモデルが多かったが、最近は本物のグランドピアノのタッチに限りなく近いモデルも出てきている。特に高音域ではどうしても軽くなりがちだった電子ピアノだったけれど、上級機種では差はほとんどなくなってきている。
 タッチは近づいたが、ヘッドフォンをしての演奏は、やはりどこか味気ない。この住環境を考えれば仕方の無いことはわかっているのだが・・・。


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