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時間よ止まれ!!
【SF 官能小説】

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時間よ止まれ!!-2

「先生…先生!大丈夫ですか?」
オレが意識を失っていたのは…ほんの数分だったのかも知れない。
目を開けると、オレの顔を心配そうに屈んで覗き込んでいる、生徒の顔があった。

「あぁ…大丈夫だ」
痛む後頭部を押さえて、上体を起こしたオレの頭の中から…『カチッ』という、スイッチが入るような音が聞こえた。
「先生は大丈夫だから…授業に行っていいぞ」
オレの言葉に、女子生徒は無言で…屈んだまま、オレを心配そうに見ている。
「大丈夫だから…」
オレが立ち上がっても…生徒は、その場から動こうとしないで、オレが倒れていた場所をじっと…見つめている、その姿にオレは異変を感じた。
「おいっ、いったいどうした…」
ゴトッ…肩を揺さぶった女子生徒の体が、そのままの格好で廊下に倒れた。
「!?おいっ!どうしたんだ!いったい!」
目を開いたまま、倒れて動かない生徒に今度は、オレの方が驚く。
「わぁ!?だ、誰か!」
走り出したオレは、廊下の角を曲がった途端、並んで談笑しながら歩いていた、二人の女子生徒に激突した。
「わっ!ごめん!」
ゴトッ…と、倒れた女子生徒に謝ったオレは、ギョとする。
まるで、マネキン人形のように倒れたまま…立ち上がらない二人の女子高校生は、談笑していた時と同じ笑顔で転がっていた。
「わっ!わっわっ!」
周囲を見回すと、廊下を歩いている女子高校生、全員が止まっていた。

(なんだ?これはいったい?)
一番、近くの教室のドアを開けると…このクラスも次の授業は、体育だったらしく…女子高校生たちが、着替え中の姿で停止していた。
窓の外を見ると、空を飛ぶ鳥まで停止しているのが見えた。
(時間が…止まっているんだ)
オレは、教室のドアを閉めて、呆然と廊下の壁に背もたれる…止まった時間の中で動いているのは、オレ一人だった。
(このまま、時間がずっと止まったままだったら…)
オレは、恐怖を感じて目を閉じると、心の中で念じた。
(動け!動いてくれ!)

カチッ…と、また頭の中でスイッチの入ったような音が聞こえた。
「でね…弟が色気づいちゃって…お姉ちゃんHしょうだって…バッカみたい…あっはは」
近くを話しながら歩く生徒の会話が聞こえた。
女子高校生のはしゃぐ、ざわめき声が校舎に響く。
目を開けると、いつもと変わらない女子高の風景が、広がっていた。
見ると…オレがさっきぶつかって倒れた二人の生徒が、不思議そうな表情で立ち上がるのが見えた。

(元にもどった…)
安心したオレは、その場にヘナヘナと座り込んでしまった。

理由はわからないが…どうやら、頭を打ったショックでオレに時間を停止させる、不思議な力が宿ってしまったらしい。
その後…オレは、少しこの不思議な力を練習して、自由に時間を止めたり…動かしたりできるようになった。
(すごいっ!!オレは時間の支配者になったんだ!)
ただ、時間を止めている間…困ったこともあるのを、オレは発見した。

まず…液体は、柔らかいアメーバのように固まったままなので…飲むことができなかった。
試しに…時間を止めて、水道の蛇口から流れている状態で停止した水を、ムリに飲み込んでみても…ノドを通過する冷たい感触があるだけで…乾きを癒すことはできずに、不気味な食感がノドに残るだけだった。

もちろん、食べ物もある程度、水分を含んでいるので口に入れた不気味な、食感に吐き出した。
もっとも、食べたとしても栄養として体内に吸収されないかも知れない。
電気や火も使えなかった…テレビをつけたまま、時間を止めたら…画面はそのまま、スイッチを切ってもコンセントを抜いても…画面は消えなかった。

レンジで調理はできるかな?と思って…時間を止めた火で、フライパンを焙ってみても熱くならなかったので…試しに火に触れてみたら、オレの方だけしっかりと指を火傷してしまった。

どうやら、オレの方にだけ熱量の移動は、あるらしい…時間を止めた世界では、普通に生活はできそうにないコトをオレ知った。

それと、もう一つ発見したコトがある、時間を止める前から持っていた物だけは、時間が停止しても使うコトができた。
缶コーヒーを持って、時間を止めても…その缶コーヒーは普通に飲めた。

これなら、食糧を持ってから時間を止めれば、食事はできそうだが…長期間分の食事を…となると、キャンプなみの食糧を持たないといけないから、ムリがあると思った。


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