〈仕打ち〉-2
「抜け…てッ…！お願い抜けてよ！」
しんと静まりかえった部屋の中に、自分以外の存在を愛は感じ取れなかった。
誰もいない今しか、逃げ出せるチャンスはない……いや、それだけが拘束台からの脱出を試みる理由の全てではないのは、その膨れきった下腹部を見れば一目瞭然であった……。
「抜けてよ！んくッ！くッ！ぬ、抜けてッ！」
ここに監禁されてから何時間が経過したのか、愛には知る術もなかった。
だが、定期的に催してしまう生理現象だけは、時の流れなど知らなくても当然に訪れる。
塵も積もればなんとやら……少しずつ蓄積されてきた小水は、今や膀胱の許容量に達してしまっており、ほんの僅かな衝撃にさえ堪えられないほどに張りつめてしまっていた。
(漏れ…ちゃう！こんなトコで漏れちゃうよぉッ！)
この部屋に自分しか居ないのなら、その空間は“個室”と言ってもおかしくはない。
しかし、いつまたあのオヤジ達が来るとも知れないのだ。
部屋の温度は仄かに暖かく保たれているが、放尿して直ぐに跡形もなく蒸発させてしまうほどの熱量は無いし、立ち上るであろう異臭を消し去れるだけの強力な空調でもなかった。
つまり、誰も見ていないというだけで、愛が用を足したという証拠は確実に残るという事なのだ。
「出ちゃうッ…!?い…嫌ッ！」
手足を突っ張らせるだけで、下腹部は痛みを発してキリキリと痙攣を起こす……早くも愛の逃走への足掻きは微力なものにしかならなくなり、不自然な身体の強張りを見せながら拘束台に凭れた……。
「やッ…やだッ！あぁッ…あッ！」
ビリビリと引き攣っている愛の幼器からプシュッと飛沫が弾けると、詰まった悲鳴のような溜め息が漏れた……破れる寸前だった膀胱は鈍痛を放ちながら縮み、放出の圧力を無慈悲にも高めていく……。
「ハアッ…！と、止まらな…いぃッ！ふ…ふぅッ！」
勢いよく放たれる小便は尿道との間に摩擦を起こし、「キュー」とも「チュー」ともとれる音を立てながら一直線になって床に向かい、まるでコンクリートを削るが如く「ビビビビッ！」という衝突音を発てて水煙を立てる。
その下劣な音は部屋の静寂を切り裂き、こんな場所で排泄をするしかなかった愛を嘲笑うように反響した……やがて元の静けさを取り戻した時には、肉体的な爽快感と引き換えに、取り返しのつかない恥辱を塗られてしまった少女の絞り出すような啜り泣きが聞こえだした……。