投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

いまいましいおんな
【その他 恋愛小説】

いまいましいおんなの最初へ いまいましいおんな 1 いまいましいおんな 3 いまいましいおんなの最後へ

言葉にも顔にも出せない感情-2

だんだん星が現れてきて、ドームの内側はすっかり今夜の星空になった。

よその進化型プラネタリウムも見にいったけど、ここのプラネタリウムの星空はやっぱり違(ち)ゃう。
実際にやったらアカンけど、よそのプラネタリウムは、星空に向かってピンポン玉を投げたら、
「あ、あのへんで当たってはね返ってくるな。」
なんて見当がつく。
そやけどここのプラネタリウムは、ピンポン玉を投げたら そのまま星空に吸いこまれていくような「闇」をうつし出すんやわ。

今回の投影テーマは日本から見えない「南天の星空」。
プラネタリウムでだいぶ星座の配列を覚えた私やけど、まだ南の星空は未知の領域。
特に「アルゴ座」はきらびやかに星が集まっとる大っきな星座。
ギリシャ神話に出てくる、勇者たちを乗せた船が星座になったんやて。(あんまり大っきいから、四つに分けられたけど)
「……日本の東北地方と、ほぼ同じ位置にあるギリシャで、なぜこの星座が作られたのでしょう。それはギリシャ神話が成立した時代は、地球の地軸の向きが今と違っていて、ギリシャの夜空でもこの星座が輝いていたのです……」

   ──☆──

それからひと月後の休日、私はプラネタリウムを見にいった。
おっ、今日もユウ子のヤツ 姿が見えへん。
この前も おらへんかった ……ははぁ、たぶんどっか他に男を連れていける場所を見つけよったんやね。
助かった〜ずっとユウ子に見つからんように、まわりに目を向けもって科学館の中を動いとったんやもん。

今回の投影テーマは『月食』。
星が消えて、大きな満月がドームに写しだされた。
「×月×日の、午前2時過ぎ 満月が地球の影におおわれはじめました。」
満月が暗くなっていく。今度見られる皆既月食のシミュレーション画像。うわ〜っ、こんなんナマで見たいけど、真夜中に最後まで起きとられるかな…と思いながら見つめとった。
「月が完全に地球の影に入っても、月は真っ暗にはなりません。地球の周りを取り巻く大気によって太陽の光が屈折し、月の表面は赤黒くなります……」

プラネタリウムの投影が終りに近づいて、私の後ろ側の東の空がほんのり明るくなった。


いまいましいおんなの最初へ いまいましいおんな 1 いまいましいおんな 3 いまいましいおんなの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前