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BLOOD LINE
【女性向け 官能小説】

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6-4

富岡は翌日実家へ帰った。同じ都内に住んでいるのに久しぶりの帰省だった。
2つ下の妹も家庭を持っているが、孫を連れてちょくちょく帰っているようだった。
父親と近所の居酒屋へ行き、迷いに迷って結子のことを尋ねた。もちろん関係を結んだとは言えなかった。取材で会ったことだけを話した。
父親は固まったように富岡の顔を見ていたが、やがて「そうか、会ったのか」と言った。
父親がサラリーマンをしていた頃、行きつけのスナックで働いていたのが倉田美津子だった。幼かった富岡には知る由もなかったが、その頃両親の仲は冷えていたのだと言う。
美津子と一夜を過ごしてから、その回数は増えて行きかろうじて家には帰ったが、子供の養育さえ折り合いがつけば離婚をしようとまで考えていた。
そんな中、美津子は身ごもった。
今をおいて他にない機会だと、美津子との仲を告白し離婚を申し出たが、母親は首を縦には振らなかった。
子供を捨てることは許されない、少なくとも二人が成人するまでは絶対に別れない。母親は頑なだったと言う。
せめて認知だけでも、と言う父親に対して「うちの子供と同じ扱いにするつもり?」と言い放った。
「水商売の女でしょう。本当にあなたの子なのかわかったものじゃない」
あの母親が、そこまで冷たい言葉を投げつけたとは富岡には想像できない。
「お母さんも必死だったんだ。お前たちをなんとか育て上げなければ、父親のいない家庭にしたくないと思ったんだ。何をどう考えても、俺が悪いんだからな。美津子さんにも結子さんにも、本当に済まないことをした。結子さんが4つ5つまでは会いに行っていたんだが、たまにしか会いに来ない俺を怖がってなぁ。美津子さんも、もういいからって。気持ちだけでいいって。その時、正直なところ開放されたような気になったよ。まったく勝手な話だけどな。それからは生活費だけを振り込んでいたが、口座も閉じて引っ越して行ったんだ。横須賀とは思わなかったよ」
話が終わって、ふと、父親は自分と結子の関係をわかっているのかもしれない、と思った。
父親と同じ血が、同じ母子を愛したのだ。
席を立つ間際、自分にも子供ができたと告げると父は「そうか。そうか」と赤くなった目元を細めてうなずいた。



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