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今夜、七星で Yuusuke's Time
【OL/お姉さん 官能小説】

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今夜、七星で Yuusuke’s Time完結-4

ああ、畜生!

白いコートまでもう数歩。白い息を吐きながら走って、走って、やっと腕を掴んだ。椿さんをやっと、捕まえた。

「放して!」

短く叫んだ声を気にもせず、間髪入れずに腕の中に押し込めた。

「やめて!放して!」

往生際の悪い椿さんがもがく。
深夜ながらも疎らに行き交う人々の視線が、痛い。
仕方無く、雑居ビルの合間に引きずり込んだ。案の定、雑踏は遠くになり二人の合間の荒い息遣いだけが辺りを占拠した。

「……は、ははっ、ははははは!」

可笑しくもないのに自分の馬鹿さ加減に笑いが出る。
なんだよ、これ。なんのドラマだよ。つーか、ドラマにしたって古すぎる演出だろ。俺、超かっこわりーじゃん。
「何が面白いの?からかって遊ぶ暇、私には無いんだから放して!」
「……放したら」

そう言って腕を放すと、案の定また逃げようとする。っは!ふざけんなよ。

ドンッ、

拳を壁に叩きつけるように押し付け、左腕で椿さんの行く手を塞いだ。
なあ、そんなに逃げ出すほど嫌いなら、何で新宿まで来たの?
嫌いなら一生目の前に現れなきゃいいじゃん。
つか、自分から切るように連絡も寄越さなかったくせに。

なんだよ、

なんのつもりなんだよ!

「……どいて」
「は、退くわけねーし。椿さんが何考えてるかわかんねーから、こうして聞くしかない」

腰を少し屈めて背を傾け、椿さんを覗き込むように顔を寄せる。暗がりの中に白い顔が際立っていた。

「話すことなんてないです。ゆーすけ君、先約があったんでしょう?今から走ればまだ待ってるかも…」
「俺は椿さんと話をする為にいるんだけど?」

言葉を途中で際切らせて言い放つ。椿さんが観念したように、俺の左腕から手を離して項垂れた。

「……話すこと?そんなの一つもないじゃない」

ぽつりと呟いた声は落ち着いていたがか細かった。

「あるよ。何で、来たくせに逃げるんだよ」

そこまで言って、自分の声が苛立っていたことに気付く。

「今まで会いたくなくて、今更どうして現れたんだよ!連絡もなく、俺は椿さんのいいように使われる代用品じゃねーんだよ!」

荒々しげに言い放つ。膨れ上がった気持ちは、結局こうして責める言葉に変わってしまった。だが、悔やむ気持ちを上回るように、口が勝手に動いてしまう。

「なんとか言えば?言い返すこととかあるんだろ?今更来て、言いたかったことあるんだろ!」

言い切った声の大きさに俺自身が驚いた。
なんだよ、俺。こんな激情タイプじゃねーだろ。
おかしい事ばかりだ。椿さんといると自分が違う人間になったように、気持ちが掻き乱されてしまう。
こんな奴じゃねーのに、カッコ悪すぎだろ。


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