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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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巴のラブラブ大作戦U-1

「まぁ、風馬君の事を……。」
「はい……。」

と、紅茶の液体に視線を落とし手をグーにしくっ付けモジモジとそう返事する稲葉さん。

見慣れたドーナツ店、横には全てを悟ったかのように仏のような顔で冷静にコーヒーを口にする巴ちゃんが付き添っていて…。まるで何かの番組でゲストをお招きしているみたい

家に来て行き成り「風馬君と別れて!」と言われた時は一瞬何の事だか分らなかったが。
どうやら彼女は風馬君と同じ美術部に所属しているので間違いなく…。

「あんなストーカーもじゃ毛、何処が良いの?」
「と、巴ちゃん!」

肘をテーブルに着けフォークで刺したドーナツボールをフリフリとさせ、投げやりなトーンでそう言い放つ彼女。

「彼をそんな風に言わないでっ!」
「!!」

巴ちゃんの言葉が気に障り、急に怒号を放つ稲葉さん。たまたま近くを通り掛かった店員
が軽くこちらを振り向く。

「稲葉…さん。」
「……。」
「彼は、風馬君はとっても穏やかで優しい人よ、それを。」
「それは、…そうだろうけど。」

稲葉さんからしたらそうかも知れないが、あんな事された私、いや私達からしたら。

「アンタさぁー、説明したよねぇー?その優しくて穏やかだっていうソイツが私達にどんな酷い事をしたのか…。」
「例の…柊さん達に付きまとっていたという…。」
「そうよ!嫌がってる彼女にしつこくしつこく、自分の目的の為なら平気で他人を巻き込んで汚い手も使って…、挙句大事な元彼現親友を刺して…、あれじゃーストーカーと表現
しても不思議じゃないっ!」
「……。」

いつになく彼を許せないでいる巴ちゃん、短気で厳しいのがたまにキズね。

「勿論、そんな事決して許せる事じゃないしそれを聞いた時はショックだった。」

だが、疑ったりさっきみたいに怒号を飛ばすような真似はしなかった。

「けど、それでも彼は優しかった…。」
「それは…私も分かる…。」
「んもぅー二人して目ぇ可笑しいんじゃない?」
「巴ちゃんっ!」

ガンを飛ばし、制止する私。

最初この人と会った時は驚いたし戸惑いもした…。けど、後々になって彼女はとても信用
出来、有り難い存在に思う。風馬君があんな事をしたせいで巴ちゃん達は未だ許す事を
捨てきれずに居て、クラスの子達も例の教室の黒板の落書きのせいで一部のクラスメート
が彼を冷たい目で見て避けて。その中でこの稲葉さんはそんな彼を避難せず、好意を抱いてくれた…。

「私が彼と出会ったのは風馬君が入部して間もない時だったの…。」
「……。」

紅茶の液体を喉に流し込み両手でカップを掴み、ゆっくりとテーブルに置く。


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