投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱりそこにある愛
【コメディ 恋愛小説】

やっぱりそこにある愛の最初へ やっぱりそこにある愛 6 やっぱりそこにある愛 8 やっぱりそこにある愛の最後へ

カピバラの恋-1

毎週のように俺のアパートに来ていた茜が、パタリと来なくなったことに気付いたのは、それから2ヶ月ほど経ってからだった。


その頃はちょうど、俺の仕事もデスマーチに入っていて、会社に寝泊まりする日々が続いたせいもあったかもしれない。


茜が顔を出さないことも気づく余裕なんてなかった日々は、職場とアパートの往復ばかり。


そんな怒涛の納期地獄をなんとか終え、仕事がやっと落ち着いてきた頃に、自分のことへようやく意識が向いた。


最近は、コンビニの弁当なんてまだマシな方、カロリーメイトばかり食いながらデスクに齧り付いていたっけ。


そんな辛い日々を送っていた分、解放感は半端なくて、仕事を終えてオフィスから出るやいなや、寒空の元で大きく伸びをすると、背中がポキポキと鳴った。


やっと一段落ついたことだし、なんか美味いもんでも食べて帰ろうか。


そう思いながら、俺は繁華街の方へ足を向けた。



   ◇   ◇   ◇



すでに街はクリスマス一辺倒で。


まだ1ヶ月以上も先だというのに、街はイルミネーションでチカチカ眩しくて、デパートや駅ビルもクリスマス向けのレイアウトに変貌していた。


そんな変化にすっかり取り残されていた俺は、ライトアップされた街路樹を見上げ、浦島太郎のようだな、と苦笑いをしていたら。


「あ、すいません」


突然肩がぶつかった感覚がして、反射的に謝る俺。


どうやら、俺がボーッと突っ立っていたから、人とぶつかってしまったらしい。


「邪魔なんだよ」


俺と肩がぶつかったとおぼしき男は、すれ違いざまに小さな舌打ちをして、足早に去って行った。


さすがにその捨て台詞にムカッときて、文句の一つでもつけてやろうかと後ろを振り返るけど、男の隣を歩いていた女の人が、男のさっきの態度をたしなめつつ、慌ててこちらに頭を下げる。


そして、今度は男のご機嫌を取るかのように、奴の腕に自分のそれを組ませて、ぴったり寄り添った。


あーあ、喧嘩吹っ掛けなくてよかった、となんだか拍子抜け。


相手に彼女がいた時点で、負けてしまったような気にさせられたからだ。


そんなカップルの後ろ姿を眺めていた俺は、


「もうすぐクリスマス、か」


と、一人ごちた。








やっぱりそこにある愛の最初へ やっぱりそこにある愛 6 やっぱりそこにある愛 8 やっぱりそこにある愛の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前