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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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拾捌-4

 茶臼山の北、木立に囲まれた古い社(やしろ)があり、そこに千夜たち傀儡女の姿があった。彼女らは人気(ひとけ)のない社殿の中央、車座になり各々両手をつないでいた。皆、白装束で、髪も細く白い真田紐で束ねている。

「皆、よいな?」

千夜がそれぞれの顔を見渡した。久乃、早喜、由莉、音夢、睦が一斉にうなずく。いずれの瞳にも静かな決意が湛えられていた。

「では、『影負ひ』の施術を行う」

千夜は、自分の右手につないだ久乃の左手、左手につないだ早喜の右手を強く握った。彼女らもきつく握り返す。強い握りは由莉、音夢、睦にも伝播し、輪になった六名全員が、しっかりと結託した。
 千夜が複雑な秘文(ひもん)を唱え始める。早喜をはじめ傀儡女たちの口にするのは比較的平易な誦文(じゅもん)だったが、心を込めて唱え続ける必要があった。
 秘文は読経のように長々と詠唱され、傀儡女たちの誦文はそれに絡まるように朗誦された。

『影負ひ』の術の効果は、遠く離れた幸村の身体に表れていった。甲冑に身を包んだ身体全体が淡く光り始めたのである。中でも、兜に新たに取り付けた六文銭の前立が輝くばかりに光っていた。折しも幸村は中天に差し掛かろうとする日輪を仰いでおり、陽光を浴びて立つ真田の頭領は、内なる光と相まって神々しくさえ見えた。
 大坂の陣が始まって以来、真田丸での大活躍、道明寺での伊達勢撃退と軍功著しい幸村は、配下の者から見ればまさに武神のようであった。


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