投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

同棲ラプソディー
【女性向け 官能小説】

同棲ラプソディーの最初へ 同棲ラプソディー 39 同棲ラプソディー 41 同棲ラプソディーの最後へ

-6


「よかった」

長かった初恋が終わったような気がした。

「佐藤も、私なんかよりずっとずっと大事な女の子が出来たんだね。
大事にしてあげて」

里香は心なしか、涙ぐんでいるように見えた。

「佐藤」
「ん?」
「ありがとう。たくさん、ありがとう」
俺の好きだった笑顔で里香がそうつぶやいた。

「なんだよ。急に」
「今の私と蒼が幸せなのは佐藤のおかげ」

里香がそんなこと思っているなんて知らなかった。

「じゃぁ、私は一人の夜を満喫するために映画に行くからね。
また同窓会しようね」

そう言って、今さっきの雰囲気をガラリと変えて映画館の方に歩きだした。

「さて。帰るか」
俺は一瞬里香の後ろ姿を見送って。
吉見の手を握って、ゆっくりと歩き出した。

自分でもびっくりするほど里香への気持ちはなくなっていて。
手をつないだ吉見とあの男の事が気になってしょうがなかった。

昼間は天気が良かった空も
日の入りが早くなって、すっかり薄暗い。

繋いだ吉見の手が冷たくて、手をつないだまま俺のコートのポケットに入れた。

俺たちは夕焼けの中、
黙ってお互いの体温を手のひらで感じながら
家までの道のりを歩いた。



同棲ラプソディーの最初へ 同棲ラプソディー 39 同棲ラプソディー 41 同棲ラプソディーの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前