１-5
「お願い……」
やっとの思いで答えたときには消え入りそうな声しか出なかった。
寸止めにしないで。
情けないのはわかってる。ちゃんと諦めるから、今だけは欲しい。満たされたい。
ため息がもれたあと、カチャカチャとベルトを外す音が耳に届く。
全てを脱ぎ捨て、準備をおえた彼が私の膝裏に手をかざしてくる。
首元に手を回したとき、合図のように疼くそこへ熱い塊があてがわれた。
彼のものが、ゆっくりと押し広げるように私の中を満たしていく。
「…あ、んんっ……」
あっというまに最奥まで受け入れたかと思うと、熱と彼の動きが伝わり始め、声がこぼれた。
「明香里の此処……すごい締め付けてくる」
苦悶の表情を浮かべながらも、慣れたように私の中を探りながら追いつめる。
「あ、あっ…ん」
揺さぶりとともに、身体の奥が熱を帯びていく。
膣内を擦りつけ絡むように彼のモノが引いては押し寄せる。囁くような吐息交じりの声と、粘液の音が絶え間なく重なっていく。
「…やっ…」
知りつくしているかのように突き上げてくる彼の下で、駆け巡った快感とともに背中を反りあげて達してしまった。
引き抜かれ、触れるだけの軽いキスを落とされたあと、彼に手を引かれるまま四つん這いになる。すでに脚に力が上手く入らない。
腰を掴みながらすぐさま中に入ってきた彼が、打ちつけながら私を突く。
「や…ん…っ…ああっ」
被さってくる彼の上体がそこにある。熱い息が私の耳元にかかる。
与えられる快楽に相変わらず息を乱しながら、ただ枕に顔をうずめた。
卑猥な音を立て、さっきよりも激しくスプリングが軋む。
力がうまく入らないはずなのに、自然と腰を突き上げる姿勢になってしまう。
「相変わらずエロい尻だなあ」
そう言いながら、ぐにぐにと感触を確かめるように彼の手が動く。
「っや……あっ、やめて…」
「バック好きなくせに」
早くなる律動とともに、突く力が強くなる。刺激が、全身を伝っていく。
おかしくなりそうなのに、身体は正直に反応する。
やがて激しく突き上げられ、私はあっけなく膝から力が抜け、シーツの上にうつ伏せになった。
「まだ終わってないからな」
呼吸だけが聞こえる中、彼の吐息のあとに声が響く。
「ん…もう……今日はだめ…」
熱を帯びたぼんやりとした頭で、ただ小さく応える。
「今日は、だめなんだ？」
含み笑いをした彼の顔を一瞥した途端、身体を抱えられた。
「せっかくだから、もうちょっと気持ちよくなっとけよ」
そう言いながら、器用に繋がったままの私の身体をひっくり返し、横たわらせる。
背後で横になる彼に後ろから抱えられるような体勢になると、寄せられた唇が耳元を伝い首筋に吸いつくように移動していく。
「んんっ……だから…あっ、あ」
胸に添えられた彼の片手に力が込められるだけで、声があがってしまう。
やわやわと、また乳房が揉みしだかれ、敏感な頂を押しこまれるたびに、身体が反応する。
持ち上げられた片足とその間に彼の手が容赦なく割り入る。
胸と下肢に同時に刺激を与えられ、何度も繰り返される動きにびくびくと芯が波打っていく。
「っはぁ…や……だ」
おかしくなってしまいそうな刺激に、視界がぼやける。
「なにがやだ？」
耳元の囁きに、甘い息がもれていく。
「ちょっとだけ激しくしていい？」
私が応えるより先に、突き上げる動きが早くなる。
自由を奪うように身体を抱えられたまま、打ちつけてくる。どこが、ちょっとなの、と思考の働かない頭で思いながらも身体は彼を欲するように快楽を求める。
荒い息が重なり、逃げたくなってしまうほどの律動にただ身を捩る。
「っあ…や…んっ…激し…」
掴むように抱えられた身体に回された彼の腕の力が強くなる。腰を強く押し付けられたあと、やがて波が身体中をのぼりつめた。
そして私の中の痙攣とともに、欲望を吐き出し脈打っていく彼を、息絶え絶えに受け止めた。