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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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拾肆-3

 幸村は城内で浮いた存在になり居心地が悪かったが、それでも、家康に対し打つべき手は打っていた。
 猿飛佐助、霧隠才蔵、三好青海・伊三入道らに命じ、大坂を離れ駿府に戻ろうとする家康一行を襲撃させたのだ。しかし、高坂八魔多の配下が大御所の輿を大勢で守っており、襲いかかってはみたものの家康にかすり傷ひとつ負わせることは出来なかった。
 幸村は後藤又兵衛と相談し、徳川方に埋められた濠を掘り返すことを大野治長に持ちかけ、許可を得て兵らに鍬を振るわせたが、なかなか作業ははかどらなかった。
 このような幸村の苦労を尻目に、大坂城を取り仕切る面々は雇い入れた兵たちへの扶持を満足に与えなかったので、食うに困った牢人らは大坂の町で狼藉を働くようになった。まるで野盗の群である。彼らの悪評はすぐに広まり、そのうち被害は京に及んで都が焼かれるかもしれぬという噂まで出た。

「豊臣の評判は落ちるばかりよな」高坂八魔多は江戸から戻った風魔小太郎と伏見城下の宿で酒を酌み交わしながら笑った。「真田幸村のように少しは使える武将もおるが、大野治長はじめ譜代の臣はぼんくらどもばかり。手飼いの兵の扱いも知らず、戦が終わったと喜んで毎夜のごとく酒宴を開いているそうな。そのうちにまた家康の大狸に化かされること必定だわい」

「家康の口車に乗って和睦し、濠を埋められ裸城同然になった所に籠もるやつらが、この上また化かされるってのかい?」

「ああ。小太郎よ、大坂城には馬鹿ばっかりが住んでいるんだぜ。淀殿は最近、盛んに評議へ口を挟むというし、秀頼は自らが先頭に立って指揮を執ろうとするも、戦の経験はなく馬に乗ったことさえないので、結局、御殿に籠もりっきり。大野治長はこちらの送り込んだ小幡勘兵衛を使える軍師だと思い込み、幸村ら諸将の積極策に耳を貸そうとせず勘兵衛の籠城策にすがるばかり。内通している織田有楽斎に至ってはそろそろ城を抜け出そうと準備しているらしい……」

「その馬鹿だらけの中で、幸村だけには警戒の目を向ける。これは一体どうしてだ?」

「おまえも真田丸の恐ろしさを目の当たりにしただろう。それに、狐狸婆の占いで悪しき卦が出たらしい。銭を家紋にした将により家康の命が危険に晒されるという禍々しい卦がな」

「銭を家紋に……六文銭だとすれば真田だな。八魔多の大将はどこでそれを耳にしたんだい? 淫薬を取りに行った時、狐狸婆の娘のお龍は何も言っていなかったぞ」

「娘に八卦のことを言うお婆ではない。今朝ほど伊賀者が密書を携えて参った。山楝蛇(やまかがし)と名の記された書をな」

「山楝蛇。狐狸婆の昔の名……」

「そうだ。凄腕のくノ一だった頃の名が山楝蛇。それを名乗ったということは、お婆め、いよいよ本性を現すつもりらしい」

「凄い忍術を使うのか?」

「忍術なんてもんじゃねえな。あれは妖術だ」

「妖術……」

「忍術はその場の目くらましだが、お婆は天候を操る。昔、一度だけ見たが、あれは奇天烈な技だったぜ。……ま、そのうち、おまえもその目で見ることになるだろうよ。ところで、江戸から持ってきた淫薬を見せろよ」

言われて小太郎は風呂敷から印籠や二枚貝を取りだした。印籠には丸薬が入っており、二枚貝には軟膏状のものが内側に厚く塗られていた。

「男用の飲み薬が通芯丸、長命丸、帆柱丸の三つで、塗り薬は痺鈍膏ひとつ。女用の飲み薬が催潤丸、歓喜丸、淫邪丸、法悦丸の四つで、塗り薬は魔快膏と悶堕膏の二つ」

「しこたま持ってきやがったなあ……。まあ、適当なのを使って拉致した女を責めてみるか」

「責め倒して腑抜けにし、幸村の命をとる木偶に仕立て上げるんだろう?」

「そのつもりだが、今度も小太郎、おまえが露払いをするか?」

「そうだなあ……江戸でお龍にさんざん精を搾り取られたんだが、まあ、一発くらいなら、相伴にあずかるとしようか」

「女は隣の部屋に寝かせてある。まずはおまえの魔羅で、いい塩梅に熟(こな)してくれ」

「まかせておきな」

小太郎は淫薬の中から通芯丸を取り上げ、酒とともに三粒ほど飲み下した。そして、籠の鳥にした女、宇乃へ用いるために催潤丸と魔快膏を手に取ると、隣室の襖に手を掛けた。

 宇乃は猿ぐつわをはめられ後ろ手に縛られて布団に転がっていたが、入ってきた小太郎を見て目を剥いた。その悪相は忘れようにも忘れられないもの……昔、出雲のお国を陵辱した男の一人だったからだ。
 唸り声を発して睨みつける宇乃。しかし、小太郎は意に介せず、猿ぐつわを少し緩めて無理矢理口を開かせ催潤丸五粒をねじ込むと徳利を逆さに紅唇へ押し当てた。酒と丸薬が一気に流れ込み宇乃は噎(む)せ込んだ。さらに小太郎は腰巻をひっぺがすと白い股をこじ開け、必死に抵抗する宇乃の隙をつき、女陰の上部に魔快膏をなすりつけた。
 あらためて猿ぐつわをきつくかまされた宇乃は、酒で飲まされた催潤丸が喉の奥に残っているようで違和感があった。妙な感じは股間にもあり、何かを塗られた陰核が淡い痒みのようなものを覚えていた。

「開(ぼぼ)が潤う淫薬を飲ませ、おさね(陰核)が疼く膏薬を塗ってやった。そのきつい目付きをいつまで保てるか……。こりゃあ見物だな」

小太郎は悪相を卑猥な笑いでゆがめ、着ているものをすべて脱いだ。一物はすでに半勃ちになっている。通芯丸はその名のごとく男根に芯を通す作用をもたらす淫薬であるが、服用してすぐに効き目が現れるというものでもない。しかし、薬を飲んだということだけで気分がすでに高揚し、一物の勃ちに現れているようだった。


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